「え、通り魔?」
「せや」
いずもが神妙な顔で何を言うかと思ったら、唐突に通り魔に気をつけろと言ってきた。
「鎮目町で??」
「せやで。しかも、鎮目町だけなんや。他ではそういった動きは見当たらん」
「へー…」
「でもさ、普通の通り魔なら俺たち負けないんじゃない??特にめいとか」
「それがな…結構力持っとった暴力団の頭や要注意やったストレインもやられたっちゅう話や」
「!!…それは…」
「やりがいがありそうっスね!!」
みさきが燃えるぜー!!と喜んでる。
ストレインも…か。
「せやからやりがいっちゅう次元の話しとるんやなくてやな…!!」
「いずも、お買い物行ってくるね」
「人の話し聞き!!」
アホしかおらんのかここは、といずもがぼやいてる。
えーっと今日買う物は…
「…めい、もう聞いとらんやろ」
「卵とココアと…何か他にいる??」
「…はぁ……洗剤買うてきて。もうすぐ切れてまうねん」
「わかった」
「あとネギ」
「や」
「嫌やない。好き嫌いはアカン」
「…むぅ」
私が頷くと、いずもは思い付いたように付け足した。
「ついでやしエリックも行き」
「え…何で」
「ここらのことまだ覚えてへんやろ。めいについてって道覚えな」
「…や、いずも…でも」
「…いい、行く」
私が驚いてエリックを見ると、エリックは"別にアンタのこと嫌いじゃねぇし"とそっぽ向いた。
「…ありがとう」
「なんで」
「いや、だって」
「…とっとと行く、……めい」
「うん、…いってきます」
「気ぃつけや」
「いってらっしゃい」
「さっさと帰ってこいよ」
…あぁ、仲間が増えて帰ってくる返事も増えたな。
みんなが口々にいってらっしゃいの言葉をくれる。
それが嬉しい。
「卵とー、ココアとー、洗剤とー…」
「ネギ」
「…うん」
「忘れたことにしようとした」
「………違う、もん」
エリックは意外としっかりしてた。
…ネギー…いずもいっぱい入れるんだもん…
お会計を済ませてスーパーをでる。
「エリック道覚えた??」
「あ゙ー…」
「れっつとらい」
「…あぁ」
そういえば前にもみさきとさるひこでやったな。
あの時は二人だったから後ろをついて行ったけど、今回はエリックだけだから隣を歩く。
「あー…ここをー…」
「………」
「…どっちだ??」
「…右…いや、左も…??」
「お前も迷ったのかよ」
「違う。…走るよ」
エリックの腕を掴んで走り出す。
右に3人、左に2人。
こちらを伺う人の気配がした。
人の気配を避けて進むと、路地裏から突然人が現れてその人に驚き思わず止まってしまった。
「!!」
「どうした、」
「伏見…くん」
「よぉ…めい。もう大分元気そうだなァ」
「…おかげさまで」
後ろから追いかけてきてたさっきの5人を確認すると、案の定青服の人たちだった。
「最近噂の通り魔は青服さんだったの??」
「それは違ぇよ。あの件は今副長が追ってる」
「…そう」
「お前に接触したのは別件だ。…ついてこいよ」
「なんで…っ?!」
握ってたエリックとの手が離れて振り向くと、青服さんが5人がかりでエリックを押さえつけてた。
「くそっ…離せよこのっ…!!」
「っ…離して!!」
「チッ…お前の相手は俺だろ」
「何を…?!」
「仲間を盾にされたらお前は手を出せない。そいつ、新入りなんだろ??…ついでに言うと、お前は俺にも手を出さない」
「…っ」
痛いところを付かれて私は唇を噛んだ。
「こいよ」
伏見くんは私に向かって手を差し出す。
…あぁ、2年前と同じだ。
でも違うのは…
「…呼んでるのは、誰」
「室長だ」
室長…青の王・宗像礼司か…
そう言えば、前に会いたがってるとかなんとか聞いた気がする。
「エリックの安全性は?」
「!!…おぃ!!めい!!」
「黙ってエリック」
「保証する」
「…そう」
その言葉を聞いて私は伏見くんの手をとった。
「…っめい!!」
「いい判断だな」
ごめんね、いずも。
買ったもの道路に放り投げてきちゃった。
洗剤、もう少し待ってて。