4本目。

キィィ…と嫌ぁな音を立てて扉を開けば広がる青空。
こんな日に雨が降る地方とか、どんな遠くに住んでんだよって話だよな、まったく。

「…誰もいねーじゃん」

三島センセー間違えた??とか思ってたら、貯水タンクの影で何かが動いた。

「高尾君??あ、緑間くんも。どしたの」

そこにはジャージに着替えた木吉サンが立ってた。

「…あ、あぁこれ、タオル返しに。あとよかったら俺のも使って」
「あ、え?わざわざありがとう…」
「さっきの、俺本当に全然濡れてねーから」
「うん、知ってる」

そう言って木吉サンは少し笑った。

「ここ、誰に聞いたの?」
「保健室の三島先生なのだよ」
「あー…ゆうちゃんか」

あのお喋りめ、と木吉サンは苦々しげに言う。

「ゆうちゃん?」
「あ、三島先生のことだよ。三島雄大、だからゆうちゃん」

俺がどさくさにまぎれて俺も名前で呼んでい?って聞いたらちょっと困った顔していいよって言ってくれたからこれからおれも名前で呼ぶことにした。
意味??別にねーよそんなもん。

「やけに仲がいいのだな、三島先生と」
「…そうだね。優しかったのはゆうちゃんだけだったから…かな」

弱ってるとこに付け込まれた、とゆりちゃんはまた笑う。
…どうして笑う??

「平和条約とやらはなんなのだよ??」
「…そんなことはまで言ったの、あの人」
「平和条約がある限り、この学校の先生方はお前に無関心だと」
「んー…とね。私が各定期テストで常に3番以内をキープできたら授業でなくても単位くれるってやつかな。ゆうちゃんが勝手に平和条約とか言ってんの」

可笑しいでしょってゆりちゃんは笑うけど、ちょっと待て。
それより可笑しいこと今あんた言ったぜ??

「常に??しかも全部?!」
「うん、もちろん」

できなきゃ追試とか。
はー…そんなことができんのかね。
…って、今までそれでやってきてんだよな。

「ところで」
「ん??」
「2人はどうしてここにいるのかな??授業は??」

今授業中のハズだよねって言われてちょっと詰まる。
ゆりちゃん真面目そうだし、サボりとかアウトだったりすんのかな。
まぁ、自習だからサボり…っちゃあサボりか、自習でも。
まさか怒られる…か??

「…自習だったから抜けた」

するとゆりちゃんは数秒ぽかんとしたあと、唐突に吹き出し笑い出した。

「ふはっ!!なははははっ!!」

変な笑い方。

「ゆっ、ゆうちゃんはなにも言わなかったの??ぷくく…」
「あ…そういや言われなかったな」
「にゃははははははっ!!!!」

腹抱えて転げまわってる。
何?ゆりちゃんってそういう人?
俄然興味が出てきた。
ゆりちゃんが落ち着くのを待って三島センセの伝言を伝えると、
ゆりちゃんが突然目を光らせた。

「ゆうちゃんのプリン!!」
「うおっ!!」

目の前で跳ね起きるからこっちが吃驚して後ろにのけぞった。

「ゆうちゃんあーみえてお菓子作りすっごい上手なんだよー」
「え、手作りなわけ?」
「うん!!プリンは本当美味しくてー(*´ω`)」

ゆりちゃんは嬉々として地面に広げて干してた制服を集め始める。
そして、貯水タンクからスタッと着地すると、笑顔でいきなり耳を疑うことを言った。

「あ、2人とももう私に関わらないでね」
「…は?」
「巻き込むのはごめんだからね。私は自分しか守る余裕ないし。もう来ないでね」

タオルありがとう、と言ってゆりちゃんは手を振る。
…出てけってことか。
ちょっと仲良くなれたと思ったのに。
なかなか動かない俺にしびれを切らした真ちゃんが
早く帰るのだよ、と俺を引っ張ってく。
すると、後ろから小さな声が聞こえた。

「Takao & Midorima.Today is not so bad.Thank you very much.」

あの嫌ぁな扉の音で半分かき消されたけど、確かにそう聞こえた。
そして、扉がパタンと閉じた。



なぁ、ゆりちゃん。
本当に関わるなって思ってんならなんでそんな寂しそうな顔してんだよ。



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