あたしの好きな人が死んだ。
幼なじみで、そして密かに想い続けた人。
不幸な事故に遭って、風にさらわれるように逝ってしまった。
あたしがまだ想いを告げないうちに。
でも、神様か仏様か何なのか知らないけど、最後のチャンスとやらはくれるらしい。
ユースケは帰ってきた。
魂だけの存在になって。


オーバータイム


それは、お通夜の日のことだった。
あたしが幼なじみということで、おばさんに「貰えそうな遺品があったら持って帰ってやってほしい」と言われ、ユースケの部屋に通された。
ユースケの部屋に入るなんて、小学校低学年以来のこと。昔は色んなことして遊んだわぁなんて、感傷に浸ってみたり。
こんなことを考えてたら、鼻の奥がつんと鈍く痛んで、涙が出てきそうになったので、思い出を咀嚼するのは一度中断した。

さて、ここからが始まり。

ベッドに誰かが座っていた。学ランを着た少年。背丈からして、あたしと同じくらいの齢だろうか。
でも、この部屋にはあたし以外は誰もいないはず。他の人達は階下にいるのだから。
あたしが声を掛けようか掛けまいか考えあぐねていると、その人物がゆっくりと振り向いた。
「ゆっこ?」
一瞬、頭が真っ白になる。
そんな頭の中にぽかりと一つの言葉が浮かんだ。
デジャヴ。
そこにいたのは懐かしい、姿、声。
そして、もうこの世にはいないはずの人物。
ユースケが、そこにいた。
姿や声、全てがユースケそのもの。ただ、その姿は心なしか、若干透けて見えた。
「ユースケ…?」
あたしの返答にならない返答で、ユースケの表情が花開くように、ぱあっと明るくなった。
「ゆっこ、俺のこと見えてるんやな!?」
「え、ええ、まあ……」
いや、今言いたいのはそういうことじゃないやろ!と自分に脳内ツッコミをかます。でも、思考と言動が噛み合っていかない。
精神が参りすぎているんじゃないかと、あたしは自分の頬をつねったり叩いたりして、今が現実なのかを確かめた。うん、痛い。
でも、唇が震えて、次の言葉が紡ぎ出せない。
一度、大きく深呼吸……。よっしゃ、いける。
「ユースケ、なんでここにおるん…?」


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