目の前にいるユースケが、ちゃんとあたしの知ってるユースケだと確信してからは、不思議と滑らかにこの現実を受け入れていった。
普段から心霊といった類を信じてないのに、こんな簡単に受け入れられるなんて、世の中何があるか分からんモンやね…なんて。
「幼なじみに会えたのは嬉しいけど、俺、明日までしかこの世におられへんねん」
なんだか、「俺、明日から田舎のばあちゃん家帰んねん」みたいなノリで言われたけど、ことの重大さはそんなモンじゃない。
明日と言えば…そう、お葬式。
「とりあえず、最後やし、ちょっと話に付きおうてや」
とユースケが寂しげに笑う。
ああ、もう、捨てられた子犬みたいな目すんなや…ほんまに…。
「うん、ええよ」
断る理由なんてない。
迷うこともなく、すぐに返事を返した。


それから、色んな話をした。
幼稚園の時の思い出話に始まり、最近の話まで。
話題が涌き水のように溢れて止まらない。
さすがに中学に入ってからは付き合いが薄れてきていたせいか、お互い喋りたいことが山ほど溜まってたみたい。
「ほんま、話し足りんわ」
話し始めて1時間も経った頃、ユースケが笑いすぎて頬を引きつらせながら言った。
「ユースケ、話し好きやもんなぁ」
「大阪のおばはんみたいに言うなや」
「じゃ、おっさん」
「おっさんちゃうし。ぴっちぴちの高校生やし」
大まじめな顔でそんなことを言うもんだから、思わず吹いてしまった。
その時、コンコンとドアをノックする音と共に、おばさんの「入るよぉ」という声がした。
あたしがなかなか降りて来ないから、心配して来てくれたのかもしれない。
「あ、すみません、長居してもうて」
「そんなん、気にせんで。ええのは見つかった?」
おばさんの台詞で、はっと思い出した。
ユースケとのお喋りですっかり忘れてた。
「あ…まだ見つかってなくて」
「まあ、男の子のものばっかりやもんねぇ……そういえば、部屋から話し声聞こえたけど、誰かと喋ってたん?」
おばさんにそう問われて、妙に焦ったあたしは、とっさにこう返した。
「あ、電話です!友達から電話来て」
「あら、そうなん?」
どうやらおばさんには、ユースケが見えてないらしい。
ユースケはちょっと寂しそうな顔して、こちらを見ていた。
「じゃあ、もう少ししたら降りますね」
と答えると、分かったわと言いながら、おばさんは部屋を出て行った。


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