犬を拾った。真っ白なオス犬。

ハニィ ハニィ。

エサも与えたし、大丈夫でしょ。
昨日拾った白いオス犬のことを考えながら、私は会社からの帰路を辿っていた。
昨夜、雨の日の帰り道、「拾って下さい」と書かれたベタな段ボールに入っていた白い雑種犬を拾ってきた。住んでるマンションはペットOKなので、その犬を家に置いてきたのだ…が。

電気点けたまま出てきちゃったんだっけ?部屋に着いて、扉を開けた途端に視界に入ってきた光に驚いた。
靴を脱ぎ、奥へ進むと、テレビのバラエティ番組のような賑やかな音や声がリビングから響いてきた。いくら私でも、テレビをつけっぱなしにする程ドジじゃない。
ドアの前で一度立ち止まって、一呼吸した。
泥棒だとか、ストーカーだとかがいたらどうしよう。
様々な最悪の場合を想定し、心構えをしてドアを開けた。すると、
「あ、おかえりー」
白い犬の耳と尻尾を生やした若い男が我が物顔でテレビを見ながら、寝そべっていた。
一応、犬がいた。
「誰、アンタ!?」
男(?)を指差す私の手が震える。
「誰って、昨日アナタが助けてくれた、例の白い犬ですよお」
「拾ったって、アンタなんか拾った覚えないわよ!拾ったのは犬!」
「だから、俺だって。俺が犬。恩返しがしたいなーって思ってたら、こんな姿に……」
ますます、意味が分からない。もしかして、これは新手の犯罪か何かだろうか。
ほっぺを叩いたり、殴ったりしてみたけど、これは現実に間違いなさそうだった。
「白い犬」だと名乗るその男は、私よりも背が高くて。私が拾ったのは、両手で抱きかかえられるくらいのちっちゃな犬だったはずなのに……。
「俺を拾って下さったあなた様の為にも、癒やしを提供し、」
「保健所呼ぶぞ」
「はい?」
「出ていかなきゃ、保健所呼ぶぞ。又は警察」
「いやいや、ちょっちょっと、冗談じゃ…」
男の白い犬耳をひっつかんで、ぐいっと引っ張った。強めに。
「痛い、痛い、痛い!ちぎれる!耳がちぎれる!」
男は悲鳴を上げながら、耳を押さえ、
「なんてことしてくれんだっ!動物愛護協会に訴えてやるっ!」
ん?あれ?耳がペタンと伏せている。
…可愛いかも。いや、この男がじゃなくて、耳が。
「ちょ、聞いてんの?もしもーし?」
深みにハマった私はもう戻れない。
こうして私は上手くそそのかされて(?)、犬男と同居するハメになった。




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