「リク!」
背後から、俺の愛称を呼ぶ声がした。ゆっくりと首を回すと、
「リク、日直の仕事サボったでしょ!?」
幼なじみの優奈がいた。
「日直…? …ああ、忘れてた」
「やっぱり…」
優奈は呆れたように、額に手をやった。
「先生、ご立腹だったよ!」
「ヤベ…」
この分だと、明日も日直やり直しとなるだろう。…めんどくさい。
俺は踵を返し、学校に戻ろうとした。これも結果は同じだろうが、帰らないよりはマシだ。
「リク」
優奈がまた呼び止める。
「んだよ」
「どうせ今帰ったって、同じでしょ?あたしと一緒に来て欲しい所があるんだけど」
数秒ぐらい悩んだが、
「いいよ」

俺が優奈に連れてかれた所は、古ぼけた駄菓子屋だった。「商売繁盛してたのは何十年前だ?」と聞きたくなるような古さだ。
「何買うんだ?」
「ん?金平糖」
金平糖。懐かしい響きだ。昔よく、祖母に食べさせて貰ったのを覚えている。その祖母が亡くなって、何年経ったろうか。あの時は大泣きしたのを覚えている。
「リクも何か買う?ここの駄菓子、結構美味しいよ」
そう言われ、俺は周りを見渡した。
一番最初に目についたのは、「曖昧ドロップス」。
昔ながらのドロップ缶に、そう書かれていた。なんだ、「曖昧」って。
それを手に取ると、じっくり観察した。
明朝体で書かれた「曖昧ドロップス」という字の下に、色んな色のドロップが描かれている。見ている限りでは、俺の好きなレモン味が入っていそうだ。
「リク、それ買うの?」
手に金平糖を抱えた優奈が尋ねてくる。
「ああ」
考えるよりも先に返事をしてしまった。いつものクセだ。このクセの所為で後悔してしまうことも少なくない。でも、これなら後悔しなさそうだ。


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