数日前から咳が止まらない。
いくらうがいをしても、いくら薬を飲んでも止まらない。
医者にも行ったけど、「異常なし」と言われた。
なのに、日が経つにつれて咳はひどくなっていくばかりで。
夜になったら、吐くんじゃないかと思うぐらい咳き込むのだ。

とある夜、いつものように吐きそうなぐらいの咳に襲われて、万が一の為に洗面所に走った。

「ごほっごほっ……は、っ」

咳き込みすぎて、喉の奥で鉄の味がし始めた頃。
同時に、身体の奥から何かが這い上がってくる感覚をも覚え始めた。
それは、吐くという気持ちの悪い感覚とは少し違う。
僅かな快感が混じったような…そんな感覚だった。
しばらくすると、喉の入り口付近に細くて長い異物があるのを感じた。
度重なる咳で出てきた、生理的な涙を拭い、口を開けて鏡を見る。
赤黒い舌の奥の方でぬるりと光る極細のソレ。ソレが異物感の原因だ。
なんとか指で届きそうな所にあったので、口の中に指を突っ込み、それを引っ張り出した。喉から異物が抜けていく、ある種の快感を覚えた。

「ああ、」

引っ張り出したソレを蛍光灯に照らして眺めた。唾液に濡れたソレは艶めかしく、光を反射していた。

「君だったのか」

愛しの人の一部。
その人を象徴する、少し茶色が混じった黒色のソレ。

「ダメだよ、出てきちゃ」

そう呟いて、またそれを口に含んで、水で喉の奥に流し込んだ。

prison named me
(全て、僕の中に取り込んで、)
(骨まで一緒になればいい。)

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