01
平日の昼下がり。
人もまばらの家電量販店。
「いらっしゃいませー」
店員の前を通り過ぎると、愛想よく事務的な挨拶をされた。
用事を済ませた俺は、足早に店を出ようと脇目も振らずスタスタと歩く。
ふと、店内にあったでかいテレビに目をやると、以前は夜にやっていたドラマが再放送されていた。
そんなドラマを突っ立って見ていた女の一人が目を輝かせながら呟く。
「こんな恋愛してみたいよねぇ」
その台詞に、一緒に来ていたのであろう友人が共感してうるさくも店内ではしゃぎ出した。
「くだらねぇ」
ボソリと小さく呟きながら、そいつらの後ろを通り過ぎる。
俺の言ったことが聞こえたのか、何かを言っていたが全く聞こえなかった。
店を出ると冷たい風が頬を撫でて、あまりの寒さに眉間に皺を寄せた。
辺りを少し見渡すと、サラリーマンやらOL、学生っぽいのまで多様な人が忙しなく歩いている。
その中でも、楽しそうに歩く恋人達の姿が目に止まった。
「……………」
幸せそうに歩く二人。
昔のことを思い出して思わず拳を握り締めた。
「本当、くだらない」
一言をポツリと零す。
本当に、愛だの恋だの、くだらない。
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