倦怠期の夫婦ってこんな感じなのか?

こっちを見向きもせずに、机の上の参考書と睨めっこしている晴紀。
俺はというと、晴紀のベッドの上で俯せに寝っ転がって携帯をやっているフリをしながら、晴紀の背中を見つめて阿呆なことを考えていた。

ここ数週間構って貰えない寂しさとイライラで頭がおかしくなるかもしれない。

そんな俺を知ってか知らずか、構ってくれない当の本人は黒縁の眼鏡を指でクイッと押し上げる。
そんな些細な仕種にすらときめいてしまう。

「晴紀…暇」
「うん」
「どっか行かねぇ?」
「ん〜」

さっきっからずっとこの調子。
返事はしてくれるけど、確実に人の話聞いてない。

つーか、構ってくれないのもムカつくけど、俺がなによりイライラしてる理由は、ここ最近エッチをしてないからだったりする。
今まで意識したことなかったけど、エッチしないの耐えらんねぇ。

「晴紀ぃ…セックスしたい」

一向にこっちを向かない晴紀にイライラを募らせながらも、猫撫で声を出して甘えたように誘ってみる。

「無理」
「んなっ!」

あまりの即答に、思わず起き上がる。

恋人と二人っきりで、その恋人がベッドの上で甘えて誘ってきたら普通断るか!?
いや、男なら襲うだろ。

「なんでだよ!」

折角人が恥を忍んで甘えた声出したっつーのに…ふざけんじゃねぇよ。

「伊武騎…明日からテストだよ?勉強しなきゃまた赤点になっちゃうんじゃない?」
「…………」

そんなことで…テストなんかのせいで、晴紀は俺とエッチしてくんねぇの?

「ふざけんな」

なんつーの?理性?堪忍袋の緒?
バカだからわかんねぇけど、何かがぷっつり切れた。



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