※版権物(土方×山崎)








あなたの移り香




副長に報告書を持って来いと言われ、持って行ったついでに二人っきりになれるんだろうなぁ、とか思うと自然と足取りが軽くなる。

手に報告書を持って、嬉々として副長室の襖を開けた。

「副長…失礼します」
「おう、入れ」

その一言を聞いて一歩部屋へと足を踏み入れる。
こっちなんか見向きもしない土方さんを恨めしく思いながらも、机の上の書類の山を見てしまえば文句なんて言える筈もなく、

「これ、報告書です」
「ん」

素っ気ない返事だけをして、やっぱりこっちなんて見ようとしない。

折角恋人と二人っきりなのに…甲斐性ないなぁ。
…なんて、口に出したら絶対にシバかれるだろうな。


なんとなく出て行きたくなくて、邪魔にならないように副長の後ろにちょこんと座り込む。迷惑かな?とも思ったけど、副長別に何も言ってこないし…。
黙々と仕事を続ける副長の背中を見つめた。


うわぁ…またあんなに煙草吸ってる。

チラリと副長のすぐ横にセッティングしてある灰皿に目を向けて思った。

「……土方さん、じゃあ」
「あ?なんだよ。ここにいりゃあいいじゃねぇか」
「いやっ、もう行きます」

そそくさと副長室を立ち去ろうとしたら、物凄い形相で睨まれた。
……さすが、鬼の副長。

「それじゃあ、失礼しましっ…て、わぁ!」
「だーから、ここにいろって」

立ち上がろうと腰を上げた瞬間に手首を無理矢理引っ張られた。
危ない、怪我でもしたらどうしてくれるんだ。
いや、まぁ、この人の場合どうにもしてくれないんだろうけど。


ふわり、と、肩に腕を回した土方さんが後ろから抱きしめてくる。
未だ火のついたまんまの煙草が顔のすぐ横にあって、これまた危ない。

「土方さんっ、煙草…危ない」
「ん〜」
「あ、あんま、ベタベタしないで下さい!」
「あ゙ぁ?なんだそれ。お前、俺に喧嘩売ってんのか」

な、なんでそう捉えるんだ、この人は!
副長に喧嘩なんて売る筈ないだろ!

明らかに声色が低くなった副長に、思わず身体が強張った。
相変わらず後ろから抱きしめたまんまの手に力が入って、さっきよりも副長と密着する。

「おい、なんでベタベタしちゃいけねぇんだよ」
「………臭い、から」
「聞こえねぇって」
「局長や、沖田さんが、煙草…臭いって」

そうなのだ。ヘビースモーカーである土方さんと密着すればする程、その煙草の臭いが移り香として自分へと残ってしまうのだ。
自分では意識していなかったけど、最近になって近藤さんや沖田さんにそれを指摘される。

「いいじゃねぇか」
「な!よくないですよ!だいたいあんたは、」

呑気な返事に怒りを覚えつつ、前に回された土方さんの腕をギュッと握りながらグチグチと文句を零す。

「山崎、牽制になっていいじゃねぇか」
「なんですか…それ」
「マーキング、マーキング」

そう楽しそうに耳元で囁きながら、くわえていた煙草を灰皿に押し付けて口から紫煙を吐き出した。


END




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