>> 面倒くさい奴

第一印象、面倒くさそうな奴だと思っていたらやっぱりそうだった。勘弁してくれよ、俺は面倒くせえのが嫌いなんだ。

「ティキぽん・・・シイを探しに行ってきてくだサイ」

池のほとりでのんびりオフを楽しんでいたティキに伯爵が言った。ティキが「そのうち戻ってくるんじゃないすかね」と適当にあしらうと、伯爵は「もう半日戻って来ないんデス!!」と心配の余り涙を垂らす。まったくロードといい、千年公はうちの女連中に甘すぎる。ティキはため息をつく。

「行ってくれますヨネ?」
「へいへい」

そんなわけでティキは重い腰を上げて、シイを探しに出掛けた。

その2時間後、

「どこにいんだよ」

心当たりのある場所は探した。ロードの遊び場だろ?家の周りだろ?それから・・・とにかく2時間探したのにどこにもいないってどういうことだよ。ティキは煙草に火をつけてふかしはじめた。本当に面倒くせえ奴。ティキは諦めて家にきびを返した。


「なあロード、シイ知らね?」

玄関に出迎えたロードに何の気なしに尋ねると驚きの答えが返ってきた。

「ずっと書庫にいるよぉ?」

まじでか。
怒りは湧いてこなかった。今までの苦労を振り返ると笑える。はは、と乾いた笑いが玄関に消えた。

――――――――


夕方、今度は晩飯だからシイを呼んでこいと千年公に言われた。へいへい、行ってきますよ。たぶんまだ書庫にいるんだろ?そう呟きながら書庫のドアを開けると、案の定彼女はそこにいた。山積みの本に囲まれて寝ている。やっぱり寝てんのかよ。ティキはシイのそばにしゃがんでシイの肩をゆする。

「おい、晩飯だってよ」
「んー」
「おーい起きろー」
「んうー」

シイが寝ぼけながら横髪を触ると、腰まである長い髪が頬にかかる。ティキはその髪をどかそうと手を伸ばした。しかし、シイがティキの手を掴んでできなかった。その力は弱く、寝ぼけているようだった。そして小さな声が漏れた。

「ごめん」
「・・・は?」
「助けられなくてごめん」

「ごめんなさい」


ティキの手を掴んだまま、うなされているようにポツポツと漏れた。誰に言っているのか、何に対して言っているのか、そんなことは分からない。でも、なんとなく分かるような気もした。

ティキは握られた手をそっと握り返して、シイの小さな頭を撫でた。



20120223



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