ホストクラブ短編 | ナノ



遠慮のない…


日下さんと付き合い始めてから、休日を一緒に過ごすようになった。

まあ、本を読んだり外食したり…そんな感じ。
日下さんが気を遣ってドライブ行こうとか昼間出掛けようとか言うけど、オレは一緒に居られればどこだっていい。
それを言うと少し困った顔をして、「分かった」と結局オレに合わせてくれるんだ。

別にそれが不満って訳じゃないけどオレに合わせて気を遣ってるのが見えるだけに、日下さんが本当は何をしたいのか分からない。
やりたい事があるなら言ってほしいし、変にオレに合わせようとしないでほしい。

触れたければ、触れてくれたっていいのに…。

「はぁ…」

特別読みたかった訳じゃない本を終えた所で日下さんに目を向ける。
日下さんはパソコンの画面とにらめっこ中で、その姿にすらドキッとしてしまう。
普段かけないメガネとか、セットしてない髪とか、きっとここでしか見れない姿だ。

(これでモテない訳がない…)

日下さんは大人の雰囲気があって、背も凄く高くて、とにかく格好いい。
そんな日下さん狙いで店に来るお客さんも少なくない。まあ、本人は自分の事には鈍いから気付いてないけど。

それもその筈、日下さんはゲイなんだ。
女の子は友達以上になる事はないし、体の関係を持つこともないって前に言ってた。
日下さんを好きな女の子には同情するけど、本人もゲイだという事をカミングアウトできずにいるから辛いんだんと思う。
オレは自分がバイだから、近い気持ちにはなれても同じじゃない。それが時々もどかしくて、もっと同じ気持ちになれたら良いのにと思っていた。

「あ、読み終わった?」

「うん…」

恐らく日下さんはオレが本を読みたいと思って待っていてくれたんだ。
本当は本を読むより話をしたり触れたりしたいと思ってるのに、日下さんはそうじゃないのかな。

「あのさ…日下さんはオレと居て楽しい?」

思わず不安が口から出る。日下さんは驚いた顔をした後、ふわりと優しく微笑んだ。

「当たり前だろ?湊と一緒に居られて楽しいよ」

嘘だ…とは言わない。実際会いたがってくれるのは日下さんだし、オレもその気持ちは分かる。
だったら、何で何もしないんだろう。

初めてエッチした日から結構経ってるけど、あれ以来日下さんはオレに触れようとしない。
オレがシャイだから遠慮してるんだろうか。

(それとも、オレにはそういう気持ちになれない?)

日下さんが嫌じゃなければもっと触ってほしいし、キスしてほしい。
けど、行動に出す事も伝える事もできないオレは、結局日下さんの気持ちが分からないまま不安になるばかりだった。




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