「湊、今日どうする?泊まってくか?」
「え、あ…うん」
咄嗟に「うん」と答えたけど、もし「帰る」と言ったら日下さんはどんな顔をしたんだろう。
大人だから当然のように受け入れるんだろうか。寂しいとは思わないのかな。
(モヤモヤする…)
確かに、自分がシャイなのは認める。そのせいで日下さんが気を遣ってるのも分かる。
けど、今のオレ達って恋人というより仲の良い友達とか同僚と変わらないんじゃないだろうか?
(そんなの嫌だ…!)
そう思ったら恥ずかしいとか思ってる場合じゃないような気がしてきて、戸惑いつつ日下さんの隣に腰を下ろした。
肩にこつんと額を寄せて、ぎゅうと目を瞑る。ドキドキして心臓が壊れそうだ。
「甘えてるの?」
日下さんはふっ、と笑ってオレの頭を撫でてくれる。
その手の大きさや温かさが益々オレをドキドキさせて、緊張で声を出す事すらできない。
(オレだって男だし、キスくらい自分から――)
服を掴んで強張った顔を向けると日下さんの下がり眉毛がぴくりと跳ねて、顔が近付いてきたと思った瞬間ちゅっと頬にキスされた。
(えっ…)
思わずキョトンとしてしまうオレに日下さんはいつもの優しい顔を向けてるだで、その様子にじわりと瞳の奥が熱くなる。
「何だよ…何でキスしてくんないのさ…」
「え?」
「オレがシャイだから?それとも飽きちゃったの?何でなにもしないんだよ!」
面食らってる日下さんを涙目で睨みつける。
日下さんは困ったように「あ〜…」と言葉を探していて、それが益々オレを辛くさせたと同時にちょっとムカついた。
「湊は、嫌じゃないの?」
「何が!」
「キスしたり、触れたりされるの…」
「はあ!?」
もう、どうにでもなれ!とぎゅうと目を瞑り、半分自棄になって唇を押し当てる。
「湊…?」
ビックリして見開かれた日下さんの瞳が、薄ら開いた視界に見えてボッと顔が熱くなった。
「いっ、嫌な訳ないじゃん…」
「本当に?」
「当たり前――んっ…っ!?」
疑うように見つめられたと思ったら次の瞬間キスされた。
落ち着いていて、それでいて濃厚なキスは頭の中を痺れさせる。
「んぁ…日下さ…っ」
大人の人はみんなこういうキスをするんだろうか。
舌が擦れる度にゾクゾクして、すぐにその気にさせられる。
ちゅっと音をたてて離れる唇の後、日下さんは背後から抱き付くようにオレを座らせて項に唇を押し当ててきた。
くすぐったくて肩を竦めるオレに遠慮なんか知らない様子で体を弄ってくる。
「はぁ…はぁ、あっ…ん…」
シャツを捲られて胸の先を指で摘ままれると、もう片方の手が下肢に伸びてきて手際よくファスナーを下げる。既に硬くなった中心を下着の中で触られてプルプルと体が震えた。
「厭らしいね…触ってほしかったの?」
「あぁ、やっ…っ」
「俺はずっと触りたかったよ」
「オレも…んっ、あ…触ってほしかった…」
「はぁ…もう…」
ぎゅうっときつく抱き締められて、それだけで体が熱くなった。