さっきまで世莉さんを抱いて、天使のような寝顔に幸せを噛みしめながら眠りについていたはずなのに…。
「ここは、どこでしょうか…」
見た事のない部屋に一人佇む俺は、辺りを見回した所で「これは夢だ」とすぐに理解した。
何ともシンプルで娯楽の欠片もない夢だ。
ベッドが一つ。そこに腰を下ろし、溜め息を吐く。
「何て殺風景な…」
俺一人、ベッド一つで何をしろと?
夢の中でも睡眠を求めるほど疲れていたんだろうか。
(どうせなら世莉さんの夢が見たかった…)
当然のように思う事である。
大好きな人と夢の中でも会いたいと思うのはごく当たり前の事で…ここに世莉さんが居れば、一気にパラダイスに変わる事は間違いなしなのにと心底残念に思った。
しかし、俺は間もなく目を覚ますだろう。
俺は時々「夢を見ている」という感覚を夢の中で感じる事がある。
それは昔、誰から聞いたか忘れたが「夢を見るのは目が覚める五分前の事らしい」と、今となっては嘘か本当か分からない事を意識するようになったからだ。
だから夢を見ると「ああ、俺はあと五分で目が覚めるのか」と夢の中で感じる。
(さっき寝たばかりなのに…)
そう思う辺り、やっぱり睡眠不足を感じてるのかもしれない。
ここにベッドがある訳だし、目が覚めるまで寝る事にした俺は布団の中に入り込んだ。
「よお」
「――!!?」
その声に心底驚いて悲鳴を上げそうになった。
いつからそこに居たのか、何故かNEXTの俊さんがベッドの中に居て慌てて飛び起きる。
「な、何故、俊さんが…!?」
「何でって、お前が夢の中にオレを呼んだんだろ?」
「ありえません。世莉さん以外の人を呼ぶなんて、絶対にありえません」
そう言い切る俺に、俊さんはクツクツと喉で笑い突然腰を抱き寄せてきた。
「なっ!?離してください!」
「分かってねぇなぁ…ここはお前の夢の中だ。お前が心の中でオレを求めてるんだよ」
「――っ!」
乱暴にベッドに押し倒されて、両腕をがっちりを抑え込まれる。
俺と殆ど体系が変わらないのに、何故か押し返す事ができなくて恐怖に体が震えた。
「や…やめてください。俺は世莉さん以外の人にこんな事されるのも、するのも嫌です」
「そんなのお前の夢が決める事だ。別にこのページが管理人の息抜きで、カップリングも受け攻めもお構いなしに書き散らかそうとしてる訳じゃねぇよ」
「何ですか、それは!言ってる意味が――痛ッ…!」
首筋に歯を立てられ痛みに眉が寄る。
俊さんの舌がねっとりと首筋を舐め、嫌なのに体が小刻みに震えてしまう。
「ははっ、そういう反応されると興奮する…」
「何でこんな…」
「それは…お前が攻めなのに何故か受け面で、これは一度受け側に回ってもらおうという管理人の気まぐれだから…と、いう訳じゃねぇ」
「はあ!?言ってる意味が全く分かりません!」
俊さんが言ってる事は全く持って理解できないが、それ以上にこれからされるかもしれない事に頭の中はパニック状態。
声が裏返り必死に抵抗するが、それ以上の力で抑え込まれて益々脅えた。
「よく分かりませんが…ここでしようとしている事をすれば、俺のイメージが崩れるのではないでしょうか?」
「だーいじょーぶ!事前に注意書きしてるし、優しい読者さん達は受けなお前もイイネ!ってしてくれるから」
「何がイイネ!ですか!離してくださ――っんぅ!」
俊さんの唇が近付いてきて、途端に噛み付くようにキスをされた。
心の中で悲鳴を上げ、世莉さんに助けを求める。
「は…っ…世莉さん…」
「アイツは来ねぇよ。諦めてオレに抱かれな」