「んぅ、ぐ…痛っ…あっぅ…」
いつものように優しいキスも愛撫もない、一方的に気持ちをぶつけられるだけの行為に涙が出る。
それでもずっと触れたかった京介の温もりや感覚に喜んでしまう。
「世莉さん…俺だってこのままで良いと思ってた訳じゃないんですよ…いつかは離れていくと分かってても、もうアナタなしじゃダメなんです」
「はぁ、うっ、京介…っ、やっあ、あっ」
「泣かないで。これじゃ、俺が苛めてるみたいでしょう…」
「ふ…うぅ…」
冷たい京介の言葉に胸が痛む。いつもみたいに綺麗な顔で「大丈夫ですよ」って、優しく抱いてほしい。沢山の愛の言葉がほしい。
いくら泣いた所で伝わるはずもなく、京介はやや乱暴に腰を打ちつけた。
「相変わらず厭らしい体ですね…こんなんじゃ、もう女性は抱けないんじゃないですか?」
「何いっ――ん、ああっ!」
背後から激しく突き上げられて、ゾクゾクと体の奥から込み上げてくるものを感じる。
平らな胸を厭らしく撫で回され、申し訳程度についてる小さな粒を指できゅっと摘ままれると刺激に体が仰け反った。
「初めはあんなに痛がってたのに、今では強く触られて喜んでるくらいですもんね…女性相手じゃ満たされないでしょう」
「んっあ、あ…っく、喜んでなんかっ、いねぇ…よっ、馬鹿!」
「あー…すみません、そうでしたね。ここをこんなにヒクつかせてグチャグチャに濡らしてても、まだ足りなかったですね」
「ちがっ――ひっ、あ、あっああ…!」
京介を受け入れたままぐるりと仰向けにさせられ、刺激にがくがくと体が戦慄いた。
息を吐く間もなく京介はオレの腰を掴み、引き寄せるように奥を突く。
何度も体を重ねてるからこそ知っているオレの良い所を執拗に責めてきて、足の間から聞こえてくるぐじゅぐじゅととんでもなく厭らしい音に泣きながら「やめろ」と喚いた。
「やっ、あっあっ…京介、優しく…してっあぅ…んあぁっ…!」
「辛いですか?」
がくがくと首を縦に振って訴える。
京介は眩暈をおこしながらたらたらと蜜を垂らすオレの昂ぶりにそっと手を伸ばし、撫で上げるようにしたかと思うと次の瞬間根元をぎゅっと握ってきた。
込み上げてくる熱を吐き出せず、痛みと苦痛で気が可笑しくなりそうだ。
「痛っ、く、苦し…っあ、イかせてっ…!」
「そうですね…気が向けば、イかせてあげますよ」
「――っん、うぅ…」
京介はもう、優しく抱いてくれないのかもしれない。
朦朧とする思考の中でそんな事を思う。
オレが欲しいのは京介なのか京介の優しさなのか…もう、何を求めていたのかもわからなくなった…。
どのくらいこの行為が続いたんだろう。外の光の差し込まないホテルの中じゃ今が昼か夜かもわからない。
ただ、猛烈に体が怠くて裸のまま暫くうつ伏せになっていた。
「世莉さん」
京介の手がオレの髪を優しく撫でる。
さっきまでの行為とは違う意味の分からない優しさに腹が立って、手の甲でパシッと振り払った。
「触んな!」
どれだけ泣いたか分からない目で睨みつけると、京介は苦い笑いを洩らした。
「触りますよ、好きなんですから」
「お前は好きな相手にこんな乱暴な愛しかたすんのか?」
「いいえ、まさか。大事にしますよ…でも、俺にだって感情はあるんです。いつまでもアナタの曖昧な気持ちに付き合ってはいけません」
「じゃあ…こんな関係やめちまえばいいだろ!」
口にした後、これが終わりを告げる言葉だと気付いた。
ハッとして京介を見れば、相変わらず何を考えてるのか分からない表情でオレを見ている。
その顔を見ていたら自分の中にため込んでいた感情がどんどん膨れ上がって我慢できなくなった。
「お前が…Queenに来なければ…」
「……」
「そうだよ…お前がQueenに来なければ、オレはナンバーワンのままでいられたんだ!こんな惨めな思いだってしなくて済んだのに…!」
堰を切った感情が溢れて止まらない。
本当はそんな事が言いたい訳じゃなかったが、心のどこかで感じていた事なんだと口にして初めて気付いた。
そうか…オレは、京介と出会わなければ良かったと思っていたんだと…。
「なあ…お前、オレの事が好きでQueenに来ただけだろ?だったらナンバーワンなんていらねぇじゃねぇか!いらねぇなら返してくれよ!」
「それは、Queenを辞めろという事ですか?」
「お前はどこだってやってけんだろ?オレは!…オレには…Queenしかないんだ…」
冷静じゃないのは良く分かっていた。
そうだと分かっていても感情が抑えられなくて、涙でぐちゃぐちゃに濡れた顔を隠しもぜず京介に訴えた。
それは、自覚していない京介への甘えでもあった。
「分かりました、アナタが望むならそうしましょう」
「――っ!」
(――オレは、何を言ってるんだ?)
プライドなんかどこにもない、情けない自分の言葉に気付いてじわりじわりと視界が歪む…。
「違う…違う…!ごめん、京介…違うから…っ、ごめん…!」
どんどん自分が嫌になる。
こんな事でナンバーワンに戻っても嬉しい訳がないのに――
「俺はいつも、アナタを泣かせてばかりですね。でも…離してあげられない」
「京介、オレ…もう…」
辛いんだ。
絞り出すように言った言葉は京介の耳に届いていて、ずっと欲しかった言葉と共に大きな体がオレを包んだ。
――大丈夫ですよ
あんなに求めてた言葉は益々オレを惨めにさせた。