「世莉さん…」
「こら、苦しいって…」
子供のようにぎゅうっと抱き付いて甘えてくる京介が愛しい。
「はは、すごい寝癖…可愛い」
「そう思うなら、もっと優しく抱き締めてくれねぇ?」
「んー…無理ですね」
「おわっ!?」
言うなり京介はオレを抱き上げてキスをしてきた。
前から抱っこされる形で寝室まで運ばれるオレは、まるで映画のヒロインさながら腕も足も絡めて京介に応える。
だからと言って羞恥が無い訳ではないので、そこはたどたどしく舌を絡めるので精一杯だ。そもそもこんな格好で運ばれてる時点で恥ずかしい事この上ない。
「んっ…ふ…」
再びベッドに戻ってきたオレは、覆いかぶさってくる京介の首に腕を回し更に深く口付ける。
もう何度となくキスをしてるのに未だに京介のキスに体がゾクゾクするのだからオレも相当だ。きっと今じゃ、他の子とのキスは物足りないんだろうな。
「ん…そういや、オーナー何だって?」
「ああ…今日、出勤前に少し話しがしたいと…」
「ふーん…」
オーナーが誰かを呼び出すのは大抵注意やお叱りをする時なのだろうが、京介の様子を見る限りそうではなさそうだ。
現在ナンバーワンの京介を呼び出すって事は、何か店側であるんだろうか…例えば、昇進…とか?
まさか移動はないだろう。何たってナンバーワンでも京介ほどの戦力は他の店にだっていないんだから、そう簡単に手放すはずもない。
「ならお前、こんな事してる場合じゃねぇじゃん」
「そうなんですけど、もう少しだけ…」
(可愛い奴…)
普段クールな京介がこうやって甘えてくれるのは嬉しい。
京介のサラサラの髪に指を滑らせ、梳くように撫でる。キリッとした目がオレを見上げ、吸い込まれるように顔を近付けた時――
「あ…」
聞き覚えのある着信音につい止まってしまった。
くぐもった音が寝室に響く。恐らく布団の中で鳴っているだろう着信が気になって仕方ない中、京介はそれに対してムッと唇を尖らせた。
「世莉さん…」
「ご、ごめんって!」
そんなジト目でオレを見るなよ、だって気になるんだから。
京介は割と携帯に関心がないようだけど、オレはそうじゃない。電話が鳴れば気になるし、急用だったらと思うと確認せずにはいられないんだ。
「はあ…いいです、今日はもう諦めます…」
渋々体を起こしオレから離れる京介に苦笑しつつ、布団の中で鳴り続ける携帯を探す。あっさりと見つかった携帯の着信画面を見た時、思わず「えっ?」と声が出てしまった。
「どうしたんですか?」
「あ、いや…コレ」
画面を向けると、それを見た京介も同じように「あっ」と声を出す。
「「オーナー?」」
思わぬ相手からの連絡に、お互いに顔を見合わせて首を傾げた。