さすが荒木、と言ったところかもしれない。
紹介された女の子のレベルの高さに、眩しくて目を細めてしまった。
今夜呼ばれたのは俺だけのようで二対二の飲み会が始まった。
二人とも可愛いけど、積極的に声を掛けてくれたのはアキという女の子だった。
幼い顔して豊満な胸をした子だ。
舌ったらずな喋り方も新鮮で、俺はすぐにアキを気に入った。
「ッああ、ん、はぁ…結城くん…」
腰を穿つ度、大きな胸が揺れる。
久しぶりの女の子の中は、やっぱり気持ちいい。
一軒目は居酒屋で飲んで、二件目はカラオケ。
そこからホテル行こうな流れになって今に至る。
このホテルのどこかで荒木も女の子とヤッてる最中だろう。
「結城くッ…あっぁあ、もっと、そこ…あぁっ!」
「…ッ」
開発済みだってすぐ分かる。散々、男と遊んできた体。
好みを言えば、少し恥じらいがあるくらいがいいんだけど…。
でも今は、気が緩むと後ろが疼いてセトを思い出してしまうから、もっと刺激を寄越せと煽られる方がマシだった。
「結城君、彼女いる?」
「え?」
弛緩した体をゆっくり起こし、虚ろな目を向けてくるアキ。
何故そんな事を聞いてくるのかとヒヤッとした。
まさかとは思うが、付き合ってくれとは言わないだろう。
所が、アキはその“まさか”を口にした。
「結城君の事、好きになったかも」
一瞬、物凄く最低な事を思った。
(面倒くさい)
正直、この子は無理だ。エッチするだけならいいけど、付き合う対象じゃない。
そう思った途端、またセトを思い出した。
――そうか…俺が好きだと言えばセトもこういう気持ちになるのか…。
「アキ、俺と付き合いたいの?」
随分な言い様だ。けど今の俺にとって、この言葉は情けのようなものだった。
端から付き合う気なんてないんだから。
「無理?」
「アキくらい可愛いと男いるでしょ?」
「いないよ、可愛くないもん」
上辺だけの中身のない会話。面倒くさくてイライラする。
(失敗した)
こういう子は後腐れがないって何で思ったんだろう。
アキはエッチしたらその気になるタイプだったらしい。
これは完全に俺のミス。
「ごめん、本命いるから」
これじゃあ、セトも俊も責められないな。
今の俺は心底最低だと思った。
翌日、大学で荒木を見た瞬間、笑ってしまった。
頬にうっすら赤い痕。
荒木も俺を見るなり笑ってた。同じ場所に同じ傷、お互いぶたれるような事をしたという証拠だった。
「恋愛してぇな〜」
「荒木は無理だろ。また傷心旅行になるぞ」
「そういう結城だって、アキちゃん可愛かったのに勿体ない」
「あの子は俺じゃなくても全然問題ないよ」
「あ〜、そんな感じする」
「そう言われるとムカツクな」
「あはは」
「……」
「……」
少しの沈黙。
荒木は何を思ったかは分からないけど、俺は昨日のアキとのセックスを思い出して頭を抱えたくなった。
分かってしまったんだ。
もう、今までと同じように女の子を抱けないという事を。
後ろが疼くんだ。
アキの事を言えないくらい、俺もセトに開発されてる証拠だ。
「「はぁ…」」
お互い同時に溜め息が出て目が合う。
「気が合うな」
「本当だな、俺ら付き合うか」
「嫌だね。荒木しつこそうだから無理」
「しつこくねぇよ。つか、俺だって無理、女の子がいい」
「そうかよ」
こんな下らないやり取りも、今は救われる。
昨日よりセトを好きになってるのが分かったから…。