勝手に発情して、勝手にセックスして、勝手に寝たセト。
何だコイツ、と思いながらリビングに行くと俊がテレビを見ていた。
「何だ、起きてたんだ?」
「ああ?ふざけんな、ここは動物園か?キャンキャンうるさくて眠れねぇんだよ!」
「悪かったって」
言いながらキッチンへ向かい、冷蔵庫からペットボトルを取り出す。
蓋を回して勢いよく流し込んだ後、ふぅと息を吐いて俊に言った。
「つか俊、お前だって女連れ込んで散々好き勝手してんじゃん。俺だって気遣ってんだよ?」
「お前らみたいのと暮らしてると、女連れ込まなきゃやってらんねぇって」
「それはお前の兄貴せい。俺は悪くない」
「はっ、否定できねぇな…」
はぁ、と煙を吐いて灰皿に煙草を押し付ける俊は呆れ顔だ。
毎度の事、と俺達はセト以上にセトの事を理解してるようだった。
瀬戸 智(せと さとし)ここに居る俊(すぐる)の兄貴で、さっきまで俺とセックスしてた相手。
ここはセトの借りてるマンションで、俺と俊は居候だ。
あんな自分勝手な奴だけど、ちゃんとした会社員でスーツなんか着て出社する。
割と良い地位にいて独身だから金には困ってないようだ。
俺と俊は大学が一緒。
バイトをしながら大学に行く日々はキツイと愚痴った所、じゃあ兄貴の家に来いよと誘ってくれた。
セトの事は俊を通して知ってたし、何より家賃がいらないというのが魅力的だ。気軽に入居を決めた。
が、いざ一緒に住んでみれば、セトは何もできなくてビックリした。
メシを作るのはおろか、掃除、洗濯、主に家事全般ムカツクほど何にもできない。多分、そこらの小学生にやらせた方が数倍マシだ。
そのくせ身なりだけはしっかりしてて、できる男と思われてるから納得いかない。
お前ら、一度セトと暮らしてみろよ!と訴えたいくらいだ。
更に問題は俺との関係。
奴は家賃をタダにする代わりに身の周りの事を俺と俊に押し付けた。
家事全般は勿論、俺に至っては性処理まで…。
最初に襲われた日、本気で驚いた。
男とセックスするのは初めてだし、突っ込まれるとか有り得ない。
けど、不思議な事に「まあ、いいや」なんて思ってしまった。
それは多分、セトの出すフランクな雰囲気のせい。
「別にいいじゃん、男とエッチしたって。良い経験になるよ」くらいの軽いもの。
俺はそれに流されてセトを受け入れた。
そこから今の関係に至る訳だが、それを知った俊の反応もまた驚くものだった。
ヤッた次の日に「兄貴とヤッた?」と何でもないような顔で言ってきたもんだから、飲んでたお茶を盛大に吹き出した。
この兄弟はおかしい。
けど、苦痛はない。きっと俺には丁度いいんだ。