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「出張?」

「そう、明日から一週間…行きたくないなぁ」

そう言ってソファーの上にごろりと寝そべるセトは、この上なく面倒くさそうだ。

セトは製菓会社に勤めていて、割と偉いポジションにいるという事は聞いている。
俺が越してきてから既に三回目の出張で、頻繁に本社へ足を運んでいるようだ。
本人はご覧の通り行きたくないようだけど、俺としてはちゃんと社会人してるなっていう意味で凄いと思ってる。

「じゃあ、明日の夕飯はいらないな。俊と適当に済ませるか…」

「あはっ、琥太郎まるでお母さんか奥さんみたい」

「え…ああ、そりゃ家賃なしで住まわせてもらってるんだから、家事くらいは…」

「可愛いねぇ」

ふにゃりと微笑まれてボッと顔が熱くなる。
セトのこの顔は反則だ。本当にそう思ってるように笑うから、つい本気になってしまう。

「ねぇ、琥太郎…」

「な、何?」

横になっていたセトが俺に近付き腰を抱き寄せる。
ああ、きっと誘ってくるな、と頭で分かっていながら口や態度では知らないふりをしてしまうのは、俊がまだ自分の部屋で寝ているからだ。
流石に毎回エッチな声を聞かれるのは色々と辛いものがある。

「一週間も琥太郎に触れられないなんて、堪えられないよ」

「何いってんだよ、別に一週間くら…んっ…」

言ってる途中で口を塞がれて、口を開けてと催促するように閉じた唇を舌で舐められる。その動きに流されるまま唇を開くと口腔に舌が押し入ってきた。

「んっ、んぅ…っ」

舌を絡め合う音が部屋に響いて鼓膜を犯す。
体の奥がゾクゾクする感覚にどんどん力が抜けて、セトが支えるように抱き寄せながら俺をソファーの上へと押し倒した。

「はぁ、っ…俊が部屋に…」

「大丈夫、今日はバイトの日だから遅くまで寝てるよ」

「でも…」

口では抵抗してみせるが、すっかりセトのペースだ。
セトの手がシャツの中に入ってきて、直に触れられる感覚にビクリと体が跳ねる。
まるで期待してるような自分の反応に、セトはくすくすと笑って再度キスをしてきた。

「ね、気持ちいい事しよ?」

甘えたフリをしてセックスする気満々のこの男を跳ね除ける事なんかできない。
だって、俺も触れられて嬉しいから…求められて拒める訳がないんだ。




「ああっ…はぁ、んっぅ…」

結局部屋に移動する事なくリビングで事が始まってしまった。
セトは乱暴でも激しい訳でもない、厭らしい腰の動かし方をしてくるから、それだけで体が熱くなる。
勃ちあがった中心から蜜が溢れ、たらたらとお腹の上に落ちてくるのも気にならないくらい夢中でセトを求めた。

「今日は何か積極的…そういうの好き」

「んんっ…ぅあ…」

好きって言葉だけで頭の芯が痺れるような感覚がした。
別に俺に対してどうこうという訳じゃないのは分かってる。
それでもセトの心が貰えたら…そんな淡い期待さえしてしまう程、セトはその気にさせるのが上手い。

分かっていても、どんどん惹かれるんだ…。

でも、後戻りもできないし、この先もきっと俺は望まないだろう。
セトが他で誰とヤッてるかなんて分からないけど、それでも今は俺を求めてくれる。
きっと心は手に入らないから、せめてセトと体で繋がっていれば、まだこの気持ちを誤魔化し続けられるような気がした。

「琥太郎のここ、ヒクヒクしてる…触ってあげるね」

「――ひぁっ、はあぁっ、あっ」

ヒクついた自身を握り込まれ上下に扱かれると、一気に快感が高まっていく。
セトの昂ぶりが内壁を刺激し、同時に手淫をされる刺激に頭を振ると、更に激しく突き上げられた。
俺の良い所を狙った動きに頭の中はぐちゃぐちゃで、この快感のやり場が分からず体を震わせる事しかできない。

「は…ッ、琥太郎…」

セトの色気のある切羽詰った声に体がゾクゾクする。
追い上げるように突き上げられ、喉からは上擦った声がひっきりなしに上がった。

「んっああ、セトッ、あ、ああっ、もう出るッ…!」

一際奥を突かれると下肢が震えて、自身から白濁が迸る。
すぐにセトも熱を吐き出し、まだしつこく垂れ流れる俺の欲にクスクスと笑いながら言った。

「もう一回しようよ」

「はあ…?何言って――」

体がいう事をきかず朦朧とする中、ガチャリとドアの開く音がした。
ヤバイ、と慌ててセトから離れようとしたけど、遅かったようだ…。

「終わった?」

ひょこっと現れたのは、セト曰く「今日はバイトの日だから遅くまで寝てる」筈の俊だった。

「ひッ――」

(見られたぁぁ!)

あっちもこっちもさらけ出した格好で、おまけにまだセトと繋がった格好をしてる俺に、俊はニヘラと笑う。

「はは、変な格好」

「――ぐっ!」

俊の言葉にカァッと顔が熱くなる。
一方セトはというと、早くどいてほしいのに何てことない顔で「おはよう」などと呑気に挨拶をして眩暈がしそうだった。

「オレ、これからメシ食うからエッチするなら部屋行って」

言いながらキッチンへ向かう俊に何を言って良いのか分からない。
戸惑う俺にセトは笑いながら漸く体を離した。

「じゃあ、部屋行こうか」

「い…行くかぁーッ!!」

セトを突き飛ばし、脱いだ服を前に抱えてバタバタと部屋に逃げ込んだ。





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