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「ぁ、あー、ァ、やら、やらぁっ」 ぐじゅぐじゅと水音を立てて、前立腺を擦り上げられる。 ローションやどちらのものともわからない精液でどろどろになった身体は、限界を訴えていて、青峰の律動に合わせてただ揺さぶられるだけだった。 「まだイケんだろ」 「もぉ、無理ぃ……ぉ、みねぇ…あお、み、」 自分の体の上で笑う男の顔さえもわからなくなってきて、まるで自分一人快楽の坩堝に落とされたようだと思う。寂しくなって必死に手を伸ばせば、その手を取られて引っ張り上げられた。 「ぁあああああっ」 そのまま抱き起こされて、座った彼の膝の上に落とされる。自重で深く銜え込んでしまい、黄瀬は大きく体を震わせた。 「あー、ぅあ、やぁあっ」 ひくひく、と喉を仰け反らせる。酸素を求めてはくはくと口を開ければ、息をするのも許さないとでも言うかのように、青峰は黄瀬の口を塞いだ。 ねっとりと舌を絡められ、そのまま奥深くでゆっくりと攪拌される。 「んぅ、んー、ぅうーっ」 抵抗するには身体が重く、黄瀬は震える腕で青峰の背に縋り付き、ゆるく爪を立てた。 イキすぎて出すものがない性器は、その先端がわずかに開閉し、必死に何かを吐き出そうと健気に震えている。 「あぅ、ひ、ぁ……もっ、ァ、死んじゃ、……死んじゃうっす、よぉ」 息が苦しくなって無理矢理顔をそらし、青峰の肩に額を擦り付ける。 「死なねぇよ」 髪の毛を撫でられて、顔を上げるように促される。顔を上げれば、青峰の唇が額、瞼、生え際、頬と顔中に下りてきた。その心地よさに黄瀬がうっとりと喉を鳴らせば、青峰はくすりと微笑む。 「前ほどヤれてねぇのに、お前は全然感度変わらないのな」 ここも、柔らかいままだし。そう言って青峰の肉塊を受け入れているそこを指でなぞられる。 「ひぁっ……ぁ、ア、あ」 黄瀬が首を振って拒絶を示しても、青峰は尚もそこをくすぐった。 「こんな広がってさ。指一本くらいなら入るんじゃねぇの?」 「無理、やめて、おねが……無理、無理っすよぉ……」 これ以上ない程に涙を浮かべて、掠れた声で必死に訴えても青峰は聞こうとしなかった。黄瀬の言葉を黙殺し、青峰は面白そうに笑いながら自身を受け入れているそこに、ぐい、と指を押し付ける。 「ぁうっ」 「ほら、入んじゃん」 「駄目、だ、駄目……ぉ峰っち、ァ、あ…あ、あ」 ゆっくりと長い指が肉襞をかき分けて入ってくる。ただでさえ青峰の熱でいっぱいの後孔は新たな侵入物を排除しようとうねったが、それすら意味がないとでも言うように、傲慢にもそれは中を突き進む。 「ひぁあああ、あ……ッ、こ、怖い、怖いッ……」 狂った様に首を振り、ぎゅうう、と青峰にすがりつく。 「すっげ、中締まったぞ、黄瀬ぇ」 「やらっ……、やだ、ぉ峰っち、ぉねが、願……ッ」 「何言ってるかわかんねぇよ。ウケる」 笑いながら揺すられる。指と熱塊が抜けては入ってくるその感覚に、黄瀬は掠れた声をあげた。 「ぁ、ア、あ……ぅあ、ヒッ、――――ッ」 身体と精神が分離したようだった。下半身が異様に熱く、だるい。頭は沸騰したように馬鹿になっているのに、どこか冷静な自分が「これは良くない」と訴える。何かが這い上がってくる感覚はあるのに、その何かがわからなかった。 黄瀬は狂った様に泣きじゃくりながら、その熱に溺れる。 目の前が、チカチカと点滅し、そうして何かよくわからない波に攫われて気を失った。 「うー…、腰痛いぃ……」 思いのほかハードだった今回の行為に、身体は悲鳴をあげていた。一歩踏み出す度にあらぬ所が痛み、黄瀬は前を歩く青峰を睨む。 「青峰っち、もっとゆっくり歩いてくんねー?!」 掠れた声で要望を口にすれば、青峰は振り返り笑う。 「お前ヒッデェ声!」 「誰のせいッスか、誰の!」 叫ぼうとしても喉はヒューヒューと空気を通すばかりで、まともな音にならない。文句を言おうとしても言えず、黄瀬はうなだれだ。 「最悪ッス。こんなんじゃ買い物いけない……」 最近はいつもこうだ。会えばセックス、セックス、セックス。 気持ちいいことは好きだし、男であることを踏みにじられる行為も、青峰が相手なら吝かでない。むしろどちらかというと喜んで受け入れているとすら思う。 でも、前はこんなではなかった。 セックスは確かにしていたけれど、こんな無茶苦茶にされるようなセックスではなかったし、バスケをして笑い合うことの方が多かった。比率で表すなら、バスケ8の、セックス1のその他1。 それが今はセックスが10割だ。 「別に時間に余裕あんだから行けばいいだろうがよ。付き合ってやんぞ、買い物」 「こ、腰が痛くてそれどころじゃないんスよぉ……。歩くのだって響くし……。青峰っちがあんな無茶するから……」 青峰の熱を受け入れながら指をねじ込まれるとは思わなかった。悲鳴を上げる肉を無視して掻き回されたそこは、今どんな状態になっているのだろう。 気絶しているうちに後処理は青峰がしたようだったが、黄瀬は不安でならなかった。きっとこれは明日にも響く。間違いない。 「……ドライでイッたくせに」 「う、うっさいッスよ!」 ぼそりと呟く青峰に、顔を赤くして怒鳴る。 「と、とにかく今日はもう帰るから! 今度ちゃんと買い物付き合えよ!?」 半ばやけになって喚けば、青峰はけらけらと音をたてて笑う。 「おーおー。まぁまたセックスだろうけどなー!」 「ゼッテー拒否るッスから!」 「拒否れたらな」 こちらを挑発するような表情に、思わず黄瀬は脱力した。 あぁもう、いつだってそうだ。 結局この男のペースに乗せられて、自分は空回りして終わる。 「このヤリチン……」 思わず毒づくが、悪い気はしないのが厄介だった。 [Box] |