新惑星をみつけた

「プラネットさんの後ろ姿は、まるで宇宙模型みたいだね。とてもきれいで、ついつい眺めていたくなっちゃう」
「そうかよ」
「ほんとだよ、ほんとう」

誉めたつもり、だったのだけれども。表情は後ろ姿なもんで見えないものの、きっといつものぶっきらぼうなあの顔なんだろうなあ。けれど、それでもわたしの宇宙模型観察は終わらない。

足首の海王星から背中の木星にかけてをぼんやり眺めた後に、プラネットさんの青いバルカンをじいっと見つめていると、ひとつ小さな疑問が脳をかすめた。固そうなバルカンといえども、やっぱりプラネットさんの顔なわけだから、人間とおんなじで、ほっぺたはやわらかかったりするのだろうか。どうなのだろうと、考えれば考えるほどに下がる、わたしの眉。やっぱりどうしても気になってしまうから、触ってみようと思って、もう何度目かわからないぐらい呼んだかたちにくちびるを動かした。

「ねえ、プラネットさん」

聞いてますか。控えめに呼びかけてみれば、ひとことに「なんだ」とすこしきつくこちらを向くプラネットさん。ちょっと来てください、といった私の言葉にも、なんだよと渋々こちらへ歩み寄ってくれるから、きっと意外に悪魔超人というものはやさしいのかもしれない。悪魔ってなんだっけ。目はすこし、きつめで、こわいけれども。

プラネットさんはわたしよりもべらぼうに背が高いもんだから、改めて正面に立たれるとどうやってほっぺたのやわらかさを確かめようか、すこし、考え込んでしまう。ううんと首を傾けて、おもわず眉間にしわが寄ってしまったのを見られてしまったようで、「カカカ!もうすこしかわいげのある顔ができねえのかい、なまえちゃんよ」と笑われてしまった。そんなにおもしろかったのか私の顔!と羞恥と滅多にされないちゃん付けに、どうすれば良いのか私がわからなくなってしまって、プラネットさんのバルカンとは反対にわたしのほっぺたが赤くなってしまったのがくやしくて。おんなじ状態にしてやりたくなって、木星に掛かっているベルトを引っ張ってやった。つま先を精一杯に使って背伸びをして、カカカと愉快にわらうプラネットさんのほっぺたに、ひとつ、くちびるを押しつけてやったら、なんだかあやまりたくなってしまった。

ごめんねプラネットさん。目をまんまるに見開いて、口をぱくぱくさせたままの呆然としたバルカンが、青と赤が混じって、紫色になってしまったね。

2020.10.01

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