(2)
そう。
アカギは電話に出たのだ。
────オレの予想を裏切って。
「………もしもし」
身体は繋がってたりでスゴいことになっているというのに、アカギの声色は冷静そのものだった。
それが何となく悔しかったから背中に軽く爪を立ててみる。
言うならば、ちょっとしたイタズラのつもりだったのだ。
………が、その“ちょっとしたイタズラ”がマズかったようで。
「………で用件は?」
電話の応対をしつつアカギは、
「っん……あぁ……ぁ…っ」
オレの中をかき回し始めたのだった。
アカギ自身の質量でもって、
まるでお仕置きとでも言うかのように。
「は………ぁ……っ」
目を瞑って何とか快楽をやり過ごそうとするけれど、
無理……たぶん無理……
っていうか不可能……
なんか太もも辺りがジクジクする。
上手く言えないけど、
痛いのに気持ちいい…みたいな…
「……で、相手はいくら出すって……言ってる…?」
アカギの声が少しずつ乱れてきた。
それがやけに色っぽい。
電話の相手である訪問者χもドキドキしちゃうんじゃないだろうか。
アカギの口調からして訪問者χは恐らく男だろう。
しかも何度か面識があるはずの───。
ああ。ダメだ。
頭がまるで働かない。
内壁を、そんな心地よい速度で擦られてしまっては……
「うぅ…っ………」
イく。
というか、イきたい。
お願いだから、イかせてください……
そんな祈り(?)が通じたのか。
アカギはいきなり電話をピッと切ってそこら辺に放り投げ、
「……頃合いだ」
オレの腰を掴んでグイと引き寄せたのだった。
「…っ…………ん…」
なんか息がしにくいと思ったら、アカギに口を塞がれていた。
くちびるの皮を甘く吸われ、意識が朦朧としてくる。
アカギの吐息が、
何故かいつもより熱い気がした─────。
◇◆◇◆◇
「チッ…切られたか」
男はでかいケータイを乱暴に折り畳んだ。
そして懐へとしまう。
────まぁいいさ。
一応コンタクトは取れたのだから。
安岡は目的を果たしたわけだ。
いささか無理矢理であった感は否めないけれど。
でもまぁ、アカギに見え見えの居留守を使われて大人しく引き下がるタマではないのだ。安岡は。
その根性が幸いした。
いま安岡はアカギの力をどうしても借りたい。
アカギじゃないとダメなのだ。
何しろY原組の組長がアカギを指名しているのだから。
安岡はその連絡係に抜擢されたわけだ。
要するに組とアカギのパイプ役である。
決戦の日は、明後日。
アカギにもそう伝えた。
億という金が動くのだから、アカギにはどうしても勝ってもらわなければならない。
いや、アカギの勝利を疑うわけではないが、
しかし。
一応……念のため。
損得では動かないアカギを死に物狂いにさせる仕掛けを打っておくか─────。
悪徳刑事・安岡は、その場をそっと離れた。
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