Nightmare&Sugar (1/4)

「よくやったな、マヒェリ」
 それは、誰。
「お前に任せれば対象は確実に消える」
 いつまで続く。
「ころして生きるか、ころして死ぬかだ」
 あたしはどこから来た。
「親の顔なんて忘れちゃったよ」
 あたしは誰。
「もしもの時は命を断て。痕跡を残さぬようにな」
 なぜ、あたしの手は真っ赤。
「あんただけでも逃げるんだ!!」
 ずっと暗い。
「振り返るな! 遠くへ!! 走って、マヒェリ!!!」
 なぜあたしだけが生きている――



「っ――!!! ハァ、ハァ……っ」
 そこは白いベッドシーツの上だった。
 まだ視界もぼんやりした中、ゆっくり体を起こし、両手の平を見る。
「はぁ……、はぁ……」
 震える手は白く、少し汗ばんでいるだけだった。
 肩を上下させ、額に手をやりながら辺りを見回せば、そこは見慣れた淡い白を貴重とした部屋――ライブラの仮眠室だった。
「……スー……はあ……」
 冷えた手を拭おうと胸元を掴むと、普段感じている少しの窮屈さがないことに気付き、身なりを確認すれば、ネックラインの開けたTシャツを着ていた。勿論、自分の服である。
(そうか……)
 目を覚ましてここに居るのは大抵“そういう”時だったが、今は“電池切れ”で寝かされていたわけではない。
 ベッドの上に突っ伏していた自分と、その状況をやっと理解した◆は、いまだ整えきらない息をゆっくり吐きながらベッドから降りた。
 変わらない、“いつもの”悪夢。
「……サイアク……」
 そう日本語で呟き、水を飲むため仮眠室から出ようとドアの前に立つが、その先に人の気配を感じた◆は服も髪も全て整っていることを確認してから、ノブを回した。
 事務所のメインフロアには、赤髪で巨躯の男――この組織のリーダー、クラウス・V・ラインヘルツが静かに長ソファに座していた。
 こちらに背を向けており、近づいていくと、顎に手をやって姿勢良く本を読んでいるのが分かる。
 気配を消して忍び寄ったわけではないので、クラウスは心得ているかのように顔を上げ、そばに立った◆を見上げた。

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