べつにですね、
◇絡ませやすそうなさくらちゃんと玲沙+α
「れいさっちゃぁぁぁぁぁん!!!!」
バァン、と前扉が開き、桃色が飛び込んでくる。
「さくらちゃん?どうかされましたか?」
ぼくはいたって冷静に声をかけた。
テンパっている人には、冷静な対応をした方がいい。
「B組の山田くんが!」
「はい」
「れ、玲沙ちゃんのことッ!」
「……はい」
なんだか雲行きが怪しくなってきた。
ちらり、と周りを見るが、まあやくんの姿はない。
興奮や冷めぬ、といった様子のさくらちゃんが、次の言葉を紡ごうと口を開いた、その時。
ガラッ
教室の後ろ扉が開いて、複数の人が入ってくる気配を感じた。
まあやくん、いるかな?、と後ろを振り返る。
しかし、そこにいた人々は……
「おうおうおう、面白そーな話してんじゃねぇか」
「玲沙、またコクられたアルカァ?」
「………ククッ。そろそろ腹ァくくってつきあっちまえよ」
「玲沙は渡さん!この俺が護ってやろうではないか!」
……悪魔達が乱立していました。
毎回毎回、よくもまあ飽きもせず来るものです。
「……お引き取りくださいませ」
にーっこりと微笑めば、突然後ろから声が落ちてきた。
「玲沙、まず君が落ち着こうか。君にコクろうとしたお馬鹿さん、今ボコってきたよ」
「!まあやくん!!」
条件反射で身を捩り、彼の腰にぎゅううっと抱きつく。
「おじょーサーン?今日はいつも以上にベッタリだね。まぁ俺としてはこーんな美少女に抱きつかれるのはむしろ嬉しいけど」
まあやくんの手が髪をすく感触にうっとりと目を細めて、呟くようにひとりごちた。
「……告白も、恋人も要らない。それを冷やかす人も。ぼくには、まあやくんだけでいいもの」
でもね、と今度はちらりとみんなを見遣る。
「ふつうのときのみんなは、嫌いじゃないよ」
嘘。むしろ、好ましいとさえ思う。
心のなかでこっそり付け加えた言葉は、まあやくんだけが知っている。
もちろん、ぼくの本当の想い人も。
「玲沙は隠れツンデレだなー」
「照れなくてもいいアルヨー」
「ククッ……」
「いわゆる“萌え”だな」
……みんなには、既にばれてたみたいだけど。
ぼくは、みんなと過ごす時間が好きです。
……あと、 ぼくはツンデレじゃない。