スマートフォン解析 幸佐 短編 | ナノ
お菓子をくれなきゃ、いたずらするぞ!

「鳥喰おう鳥でござる!!」

お館様は所用で越後の軍神の元へ、佐助は天気が良いということで溜まりに溜まった洗濯物を洗い中庭に干している最中だった。

「朝から誰も構ってくれないのだ」と一人拗ねている幸村に、佐助が「だったら他の武将の元へ行って一勝負しておいでよ」と握り飯と団子を持たせ放り出したのは午前中の出来事。

辺り一面が真っ赤に染まり、「そろそろ洗濯物取り込まないと湿気っちゃう」と佐助が中庭の洗濯物を取り込んでいる最中であった。
汗と泥で汚れた主の姿に「誰かに構ってもらえたの?良かったね」と微笑む佐助の姿はまさに【おかん】そのものであった。

駆け寄ってくる幸村に縁側で寛いでいた信玄は「良かったの、幸村!」と幸村の頭をぐりぐり撫でた。その姿はまるで本当の親子のようで、佐助は胸元がほんのり温かくなっていくのを感じ取る。

──今日も平和だな〜。
──今夜の夕餉は何にしようか。

あ、そうだ!さっき旦那が「鳥食べたい」って云ってから鳥料理にでもしようかな。

二人の微笑ましい光景を眺めながら、佐助は縁側で洗濯物を畳み夕餉の献立を考えていた。
洗濯物も畳み終わった佐助は、畳んだばかりの洗濯物を箪笥に片付けた。
背にした中庭からは熱い殴り愛がヒートアップしている師弟の掛け声が聞こえてくる。そろそろ殴り愛を終えてもらわないと、そう思った佐助はゆっくり立ち上がると足音も立てず縁側へ歩いていく。

「そろそろ夕餉の時間だよ、二人とも!旦那は着替えないと夕餉抜きだからね。大将もお城に連絡しないと、向こうの人たちが心配するから気をつけてね」
「わかった」
「わかったでござる」

***

幸村と信玄を二人まとめて風呂場に放り込んだ佐助は、影分身を使いせっせと夕餉の準備に取り掛かっていく。
二人が頬を赤めほんのり湯気をたてながら「腹へった」とやってくる頃には夕餉の準備は整っていた。

三人一緒に夕餉の時間。
佐助が白いご飯を山盛りにし二人に手渡せば、ガツガツと威勢良く食べていく。
今夜の献立は鳥尽くしだ。

美味い美味いと頬を頬張りながら満足そうに食べる二人に、佐助は「もっとゆっくり食べてよね。喉に詰まっちゃうかもしれないでしょ」と苦笑いを浮かべた。

その日の晩、佐助は幸村の寝室の天井裏に待機していた。
帰宅する信玄を見送った二人は、昼間の疲労がピークに達したのかそろそろ寝るかと寝室へ向かったのだ。

幸村は「佐助、俺の布団に来い」と仄めかす。
佐助は「今夜は駄目だよ、我侭言わないで。いい子だから」とのらりくらりと誤魔化した。

そんな佐助に幸村は「政宗殿が仰っていた事と違うでござる」と少し拗ねたが、佐助はその時その言葉を深く考えようとはしなかった。

深夜。
ふと幸村は眼を開け、傍に置いてある槍に手をかけると槍で勢い良く天井を貫いた。突然の事に驚いた佐助は、屋根裏から上半身だけ姿を現した。

「ちょっと旦那!どういうつもり?!」
「佐助……鳥喰おう鳥!!」
「はぁ?何、まだ何か食べたいの?」

幸村の言葉の意味が判らず首を傾げる佐助に、幸村は不機嫌そうに佐助に手を伸ばした。
どう見ても重力を無視しているポンチョを引っ張り佐助を天井からずり落とそうと試みた。

ポンチョを引っ張られ前が見えなくなった佐助は「やめてやめて、脱げちゃう」と必死に抵抗したが幸村の方が力がある為、結局自らの意志で天井から降りてくる羽目になった。

「もう!どうしちゃったの、旦那ったら」
「佐助、鳥喰おう鳥!」
「だから、鳥だったら夕餉で散々食べたでしょ!それとも何まだお腹すいてるの?」

意味がわからないと首を傾げる佐助に、幸村はブチッと何かが切れる音を聞き取ったという。
直ぐに佐助の手を掴み、自分の方へ引き寄せそのまま倒れこむように畳の上に押し倒す。

何が起こっているかわからない佐助は無意識のうちに受身をとっており対した痛みは無かったが、何が起こっているか判らないからこそ軽く困惑状態に陥ってしまう。

「何!?だ、旦那!?」

困惑気味の佐助に幸村は跨ぐ様に乗り掛かりと、佐助を見下ろしながらもう一度あの言葉を言った。


──鳥喰おう、鳥──と。
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