スマートフォン解析 幸佐 短編 | ナノ
*少しだけ奥州主従登場

木枯らし吹く肌寒い季節。寒い寒いと云いながら、佐助は自室の箪笥から冬使用に厚手のポンチョを取り出した。暑苦しい男ばかりの武田軍の中で、佐助は唯一の寒がりだったりする。
何時も熱血に燃え上がっている幸村と一緒にいるせいか、そんな主を焚き火扱いしている不躾な忍び・佐助。そんな佐助は幸村と一緒に居ない時は、大将である信玄のモフモフに手を突っ込んで寒さを凌いでいるのは武田軍の中では有名な話だ。

「寒い寒い〜!……って朝から暑苦しいな〜」

自分の両手で体を擦りながら摩擦を起こし暖めていると、中庭の方から怒鳴り声に近い叫び声が飛び込んできた。
寒い寒いと云いながらも廊下に出てみると、中庭には見ているだけで寒そうな服装の主君二名の姿があった。

寒い季節がやってきても、武田軍は烈火の如し燃え上がる気合を糧に今日も今日とて元気いっぱいである。

──無駄に元気があるんじゃないの?

言葉の通り「燃えよ我が魂」と叫びながら燃え上がっている主に、手を添え暖炉をとっていた忍びは呆れたように溜息一つ。
お前に気合が足りないのじゃ!!と叱咤激励の言葉を告げる信玄に、寒がりな忍びは苦笑いを浮かべるしか出来なかった。

「寒いと云うならば佐助。変化の術で炎に化ければ良いではないか」
「それって俺に燃え上がれってこと?!死ねって云ってるようなもんだよ、旦那!!」

寒い寒いと文句を呟く忍びに、主君幸村は真顔で提案を一つあげてみる。
しかし忍びは「そんなの嫌だよ!」と首を大袈裟なほど振り拒絶した。

「ならば佐助。わしらと”おしくらまんじゅう”何ぞどうじゃ?」
「それは良い提案でございます!お館さまぁぁ!!」

拗ねた様にそっぽを向けてしまった忍びに、主君の主君信玄は両手を広げ佐助に飛び込んでくるように云った。それに反応して、幸村は信玄の胸元に体当たりを仕掛け始めた。

「そっか……それもいいかもね〜」

佐助の頭上にはモコモコと『おしくらまんじゅう』をする武田三人組の姿が浮かび上がってくる。
信玄と幸村の間に佐助が入り、両サイドから力いっぱいタックルしてくる……。


「いやいやいや!俺様押しつぶれちゃうでしょうが!!」

「やっぱり却下!!」と佐助は心底嫌そうに高速で首を横に振った。そんな佐助に、二人は「わがままだ」と眉間に皺を寄せたがどう考えてもこの二人相手では分が悪すぎる。

「あ、だったら焼き芋しない?!落ち葉集めてお芋大会!!」

何とかこの場の空気を換えようと、佐助は半ば半泣きになりながらも懇親の提案を出した。
それは冬定番の暖かい「落ち葉IN焼き芋」である。
佐助の必死な提案に、お館様命の幸村はあまり良い顔をしなかった。誰よりも敬愛する信玄の提案を退けてしまったからだ。
それでも彼と付き合いの長い佐助は、最後の切り札を隠し持っていた。

「……佐助、それはお館様の提案を退けてまで」
「今年のお芋さんは、甘くて美味しいんだよ。旦那」
「……う、甘いのか?」
「うんうん。でもって修行の一環にもなる芋掘りもしない?!ね、大将」

佐助は信玄に助け舟を出した。泣きそうに懇願する忍びに、信玄は小さく笑みを浮かべると幸村の頭に手を乗せ力いっぱい撫でた。
信玄の予想外の行動に、驚きを隠せない幸村。顔をあげると、其処には嬉しそうに笑う信玄の姿があった。

「よし!幸村、そして佐助よ!午後から武田名物・男の焼き芋大会を実行する!!そのために必要な芋を取ってくるがよい!!」
「はっ!かしこまりました、お館様」
「お・や・か・た・さ・まー!!必ずや成し遂げて見せましょうぞ!!!」

気合十分。幸村は佐助の首根っこを掴むと表門目指して駆け出した。
そんな二人の背中を見守るように見つめながら、信玄はふとある事を思った。

「……ところで芋は何処から手に入れるんじゃ?」

修行が出来る芋掘り。それは果たして市場で出来ることなのだろうか?
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