スマートフォン解析 幸佐 短編 | ナノ
「ところで何処で芋掘りをするのだ、佐助?」
「……お願い。今は話しかけないでね……ごめんね、旦那」

目的地を知らない幸村が「何処で」芋掘りをするのかと、疑問を抱いたのは正門を潜り城下町に辿り着いた頃だった。
佐助を脇に抱えながら突進していく幸村は佐助の「お願い!おろして〜!!」という叫びは聞こえず。

結果……佐助は酔った。

「忍びらしからぬな!」を幸村は怒るが佐助としては脇に抱えられながら(しかも腹に幸村の腕が食い込んでいる状態)物凄い体が揺れる中、酔わない方が可笑しいというのが本音だ。
しかし、今は云い合いをしている状況ではない。午後までに芋を用意しなければ、信玄と幸村に挟まれ潰される運命が待っているのだ。

『武田名物・男のおしくらまんじゅう!!』
と言いながら大勢の武将たちまで加わって押し潰されたとしたら……そこまで考えてしまい、佐助の顔面は真っ青に染まってしまった。

「……それだけは絶対に阻止しなくては!!」

心に誓った佐助。幸村の腰に腕を回すと、空いている腕を天高く上げた。すると何処からともなく真っ黒な大きな鳥が上空に姿を現した。
それは徐々に急降下してきて佐助の腕の近くまで降り立ってきた。佐助は鳥の足を掴むと、幸村にニンマリ笑みを浮かべる。

「旦那〜。落ちないようにしっかり俺の体に掴まっていてね」
「分かった、佐助」

ふっと笑みを浮かべる幸村。無駄に凛々しく見えたもんで、佐助の頬がゆっくり赤く染まっていく。
佐助の微妙な変化に、幸村は「どうした?熱でもあるのか?」と心配そうに尋ねてくるが、佐助は「大丈夫!」と何とか誤魔化した。

「時々……無駄に格好いいんだもんな〜、旦那ってば」
「何か云ったか、佐助?」
「別に〜」

これ以上追求されないような顔を逸らした佐助だったが、幸村から見える佐助の耳は頬以上に赤く染まっている。
幸村はそんな佐助が可愛らしくて、小さく笑みを浮かべた。
佐助に足を掴まれた鳥は、驚いた様子も無くゆっくりと上空にあがっていく。
ふと下を見れば城下町の人々が驚いたように、上空に浮かぶ二人を見上げている。既に人々はとても小さく見える位置まで来ているようだ。

どれくらい空を飛んでいるのだろう。
そろそろ腹がすく頃だと幸村が思った時、それを察してか佐助が「茶店でお団子でも食べていく?」と声をかけてきた。

「目的地までは、まだ遠いのか?」
「う〜んとね……もう少しで見えてくる感じかな」

遠くを見つめながら答える佐助。佐助の目的地には、何やら目印があるらしい。
幸村も佐助につられ回りを見渡したが、特に目立った光景は見られない。ただ木々が生い茂る山々を超え、広々とした田んぼとその中にポツンとある小さな家々。
のどかな光景は信玄が治める甲斐でも見られる光景だ。だが甲斐と少し異なるのは畦道を歩く人の中に、随分人柄の悪そうな武将の姿を見かけるくらいか。
あとは田んぼに立つ案山子の一部に眼帯が付けられている点だろうか。

「あ、見えてきた!!」

佐助の顔がぱっと明るくなった。どうやら目的地が見えてきたようだ。
佐助の視線の先を辿れば、そこには大きな竜の形をした高台のような姿が見られた。

どうみても「摺上原双竜陣」にしか見えない。
もしやと思い佐助に尋ねてみれば、佐助は真顔で幸村の問いに答えた。

「うん、そうだよ。お目当ては右目の旦那特製のお芋さん」
「……それで”修行も出来る”ということか……」
「そういうこと!じゃ、行きますか!!」

佐助は鳥の足から手を放すと、伊達の本拠・摺上原の門の前に降り立った。
竜が棲むとされている伊達の本拠・摺上原。その一番奥には竜の右目こと片倉小十郎の畑が存在すると云われている。

「旦那。大将のために芋を掘りに行くんだからね!」
「そうでござった!お館様が待たれておるのだ!!いざ参る!!」

二人は門を突破した。既に侵入者に気がついているのだろうか、葬竜陣が発動されている。相手に不足は無い。目指すは芋、芋なのだ!
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