スマートフォン解析 幸佐 短編 | ナノ
佐助が昼餉として用意していた炊き込みご飯と、体が温まるトン汁。それらは「武田名物・焼き芋大会」に呼ばれた武将達が美味しくいただいていた。
「昼餉前には帰るから」と云い残して去っていった佐助と、「必ずやお館様のために芋を芋をー!!」と叫んでいた幸村の姿はまだ見えない。

「城下町に買いに行くだけだとおもっておったのじゃが、幾らなんでも遅くはないか?」
「左様でございますね……あの馬鹿二人は一体何をしてるのでしょうか」
「……才蔵。お前あれは一応、上司と主君なんじゃぞ」

相変わらず毒舌な才蔵に半ば呆れたように突っ込み信玄。そんな二人のやり取りの中、一人の武将が声を張り上げた。
目を見開き天高く指を指す男の視線の先に皆が注目する。
其処には太陽をバックに、ボロボロになりながらも大量の芋を抱える佐助と幸村の姿があった。心なしか鳥も少しボロボロになっている。

「ただいま〜!」
「お館様!!この幸村、芋を採って参りましたぞ〜!!」
「うむ、でかした!!見事じゃ〜!!!」

鳥から降り立った佐助と幸村は、大量の芋を抱え信玄に駆け寄った。信玄は両手を広げ二人を力いっぱい抱きしめた。
感涙する信玄と幸村。間に挟まれ「苦しい、助けて」ともがく佐助に気がつかない武田の武将達も、つられて涙を浮かべている。

何とか二人の間から抜け出せた佐助に、才蔵は首を傾げながら訪ねた。
才蔵の視線の先には、佐助の背負っている風呂敷いっぱいの芋。
心なしか返り血のような赤い斑点がついていた。

「……城下町で買ってきたのでは無いのか?」
「ううん。竜から強奪してきた」
「……は?」
「だから、体を暖める為に竜と戦って奪ってきたんだよ」

そういう佐助は、心の其処から嬉しそうに微笑んでいた。


***

その頃の奥州

「大変申し訳ございません。政宗様!!」
「……小十郎、だから何度も云うが俺は全く気にしてないんだから、お前もそんなに気を落とすなって」

上座に腰をかける政宗は、目の前で深々と頭をさげる自分の右目を呆れたように見つめた。
昼間。小十郎の畑が武田の忍びの襲撃にあったらしい。
すぐさま駆けつけた小十郎が見た光景、それは……。

小十郎の畑で大切に育てていた芋という芋を全て引っこ抜いている佐助の姿があったのだ。
すぐさま芋泥棒に激突していった小十郎だったが、寸での所で逃げえられてしまい芋まで盗まれてしまったのだ。

その芋は政宗が趣味の調理で使用する為に、小十郎に作らせていた芋だったのだ。
いわば政宗の芋だ。
それを易々と盗まれてしまった事に、小十郎は深く傷つき今に至るわけで。

土下座をする小十郎の肩は小さく震えている。多分悔しさから薄っすら泣いているのか。はたまたブチ切れ寸前で、小刻みに笑いを抑えているのか。それは上座に腰掛ける政宗にも分からない事だ。

何度も何度も謝罪する小十郎に、政宗は本心から気にしていないのだと告げるのだが。

「こんな愚か者をお許しになられるとは!何という寛大な……!!そんな政宗様にこのようなご迷惑をおかけしてしまうとは!!」

と、その繰り返しになってしまう。
そろそろ、このやり取りに飽きてきた政宗であった。
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