好きだ


アンチ王道くんに失恋した一匹狼くんの話



好き、なんだ。嘘じゃなく、本気で想ってる。
今までは、男を好きになるなんて考えられなくて。極普通に女が好きだったし、セックスするのだって女だけだ。でも、あいつは特別だ。陽太(ようた)は、特別なんだ──……


満面の笑みを浮かべながら大きな声で話した陽太に、心臓が止まりそうになった。周りを見渡すと副会長やら会計やら、生徒会の連中が苦虫を噛み潰したような顔をしてる。多分、俺もおんなじようなもんだろう。
天真爛漫で、ちょっと世間知らずだが真っ直ぐな陽太が会長に惹かれてるのは薄々気付いてたが、正面切って宣言されるとやっぱキツイ。

『俺っ、一臣(かずおみ)と付き合うことになったんだ!応援してくれるよな!』

一目見れば目が離せなくなるような可愛い笑顔を振りまく陽太は、俺が頷くと疑ってない。俺は、拳を握りしめて、奥歯を噛み締めて、口の端を吊り上げた。

「ああ。……よかったな、陽太。………てめえ、もし陽太を泣かしたら、コロスからな?」

最初は意地悪な笑い方で。最後は陽太の腰に手を回す会長を睨みつけて。途中、陽太の頭を軽く撫でながら、言ってやった。
陽太は照れて頬を赤く染めながらありがとな!と可愛くハニカミ、会長はハッと馬鹿にするように笑う。
握りしめた拳に、もう一度強く力が篭った。

イチャイチャと見せつけるようにじゃれ合う二人を見てられなくて、適当に理由をつけて自室に戻り、しゃがみ込んだ。

心から好きだった。
たくさんの女と付き合ってきたしセックスをしてきたけど、こんなに本気になったのは初めてだった。
……初恋、だったんだ。


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