えらいこっちゃ〜!


俺様会長×チャラ男会計
王道展開終了後



「……ちょ、まって、かいちょ」


初めまして、おれは瀬古 翔太(セコ ショウタ)って言います。

おれは一部の人達に多大な人気を誇る所謂王道学園に通ってて、ちなみに生徒会会計なんてやっちゃってたり。

転校生が来たり、その転校生におれとかいちょー以外の生徒会役員が惚れちゃったり、そのみんなが生徒会の仕事放棄しちゃったり、そんな役員達を説得したり、転校生に巻き込まれた平凡くんを助けたり、まあいろいろな紆余曲折を経て、なんだかんだでいつの間にかおれとかいちょーは付き合い初めたりしちゃって。

それで今、かいちょーの寮の部屋でおれは押し倒されちゃったりしてるわけですが。


「……か、いちょー、まっ、」
「………なんだ」


声を上げてかいちょーの体を押し返したら、すっごい不満げな顔で睨まれた。


「……あのね、おれ、あの、」
「…もう黙れ、」


おれが口を開いたらそういってかいちょーの唇押し付けられて、かいちょーの右手が服の中に入って来た。

ていうか、一週間ぐらい前にかいちょーに告白されたおれが、ついさっきおっけーしたばっかじゃん。付き合って5分も経ってないよ、きっと。それなのにもうヤっちゃうの、会長手出すのはやいー。

そんなことを考えて気を紛らわせてたんだけど、かいちょーの手が下半身と乳首に触れた瞬間、我慢出来なくなってかいちょーを突き飛ばした。


「っ!」


ああ、ごめんね、かいちょー、でも、マジで待って。

驚いて、傷付いた顔でおれを見るかいちょーに心から申し訳なく思いながら立ち上がって洗面所に駆け込んで、綺麗な洗面台に思い切り嘔吐した。

後を着いてきたかいちょーが驚いて、心配そうに背中を撫でてくれようとしたけどそれを断って、おれは数分間吐き続けた。

もう胃液しか出なくなって、はあはあと息をしながら顔を上げると、目の前の鏡に青白い顔をした自分が映って、その後ろですっごい心配そうな顔したかいちょーもいて、とりあえずヘラリと笑ってみた。


「………てことなんだー、ごめん、最初に言うべきだったよね」
「………」


ああこれは…、スピード破局になるかもなあ…、と、おれは天井を見上げた。


あのあと口を濯いだおれはかいちょーを連れてソファーに座り、自分のことを説明した。

中学三年生の冬に男に強姦されたこと。
怖い、とかそういう思いは残ってないこと。
ただ、自分でする分には良いけど他人にそういう触られ方をすると気持ち悪くなること。
だから、かいちょーとセックスをできないこと。

話したあと、かいちょー、ずっと黙ってる。ああ、終わったー。初恋は実らないと言うのは本当なのね。

馬鹿なことを考えて、泣きそうになるのを堪えた。泣くな、泣くな。一番泣きたいのはかいちょーでしょ。おれが泣くな。


「……しょ、」
「あは、ごめんね、エッチ出来ないなんて嫌だよね。ごめん、返事する前に言わなきゃだったよね、おれって、ばかだなー。そんなこと知ったら、かいちょー、おれのこと嫌いになるって、おもったら、っいえな、くなっちゃ、てー、あはっはは、……ごめん、帰るね、本当にごめんね」


かいちょーに、何か言われるのが怖くて、かいちょーが口を開くと同時に一気にまくし立てる。まくし立てて、泣くの堪えて、立ち上がった。


「好きって言ってくれて、ありがとお、すっごく、嬉しかったん、だよー。おれも、大好きだった、から。」


最後に伝えておこうと、笑顔で言ったつもりなのに、頬が濡れて、おかしいなあって言いながら手の裾で拭ってたら、かいちょーに抱きしめられた。


「かいちょ、」
「悪い」
「へ?」
「悪かった、翔太」
「な、に言って、んのお、あやまっるのは、おれ、のほ、だっしい」


抱きしめられて、頭を撫でながら耳元で謝られて、どうすればいいのか分からなくなる。


「…そんなことがあったのにいきなり手出して、悪かった」
「や、べつに、だ、いじょぶだけど…」
「とりあえず、ちゃんと話そうぜ。俺はやっと手に入れたお前を手放す気はねえ」


そういわれて抱きしめる力を強くさせて、俺はボロボロ泣きながら思わずかいちょーのおっきな背中に手を回してしまった。


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