学校につくとみんなが俺を見ていた。


次の日は起きるのが憂鬱だった。なんだか体が重い気がするし、熱があるような気がするし、頭も痛い気もする。

布団に潜りながら母さんにそう訴えると『いつも同じことばっか言って……。もっとレパートリーを増やしたら考えてあげるわ』と言われたので、さらに腹痛と吐き気、ついでに実は殺し屋に狙われてるんだと最大の秘密を暴露までしたのに三秒間考える素振りをしたあと躊躇なく布団を剥ぎ取られた。母さんの嘘つきは今に始まったことじゃない。

ため息を堪えて食パンを銜え家を出た。
出た瞬間に何か硬いものにぶつかって尻もちをつく。見上げると制服の胸元にバターをベッタリとつけながら怖い顔をした吉村さんがいた。
もしやこれはラブコメの王道の、と思いつつ制服に擦り付けられた食べる気のしない食パンを捨てに家にUターンした。

学校につくとみんなが俺を見ていた。自意識過剰ではなく、本当に俺を見ていた。
まあ、俺も校内一の不良と名高い吉村さんと一緒に登校してる奴が俺みたいな平凡だったら注文するか。しかもその吉村さんが制服の胸元をテカらせてなぜか足元びちゃびちゃになりながら、俺みたいな平凡のカバン持ってたりしてたら、余計に。


「いやあ、俺のこと好きだからってまさか吉村さんが荷物もちしてくれるとは思わなかったぜ〜」

吉村さんに教室まで送ってもらってから、何だどうしたと恐れながらも興味津々に群がってくるクラスメイトに笑いながら話す。


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