※「思い通り」ミスエス





気づいたときに目の前に見えたのは
ミストレの酷く歪んだ笑みだった


体全体が強烈に痛く動けない
真っ赤で生暖かい液体が体にまとわりついている
 なんでこんな事になってしまったんだろう
 
 
「ねぇ、何考えてるの?エスカバ」


俺の髪を乱暴に掴み、自身の歪んだ顔に近づけた
ミストレは俺の傷だらけの顔を見ると嬉しそうに笑った


「……ん、だよ」
「いやぁ、君のこんなに無様な姿が見れるとは。ねぇ?」


そう言って掴んでいた髪を離した。
力が出ない俺は重力にしたがうまま床に倒れた


「ねぇねぇ君さぁ、言ってたよね?『俺はお前の思い通りにはならない』って。それ証明して見せてよ。反抗してさ」


―――あぁそうだ。俺そんな事言っていた。


…今日はやけにミストレの八つ当たりが酷くて
ふざけんなと一言言おうと思ってミストレの部屋に尋ねたんだった。


『おいミストレ』
『なんだい?俺に用?』
『俺に用?じゃねぇよ。てめぇふざけんのもいい加減にしろよ』
『そんな事急に言われてもなぁ…何のことだか』


分かってるくせに分からないフリをするミストレにさらにイラつく


『いちいち嫌な事があったら俺に八つ当たりしてくるんじゃねぇ!!』
『あぁその事?いいじゃん。だって君は俺の玩具だもん』
『はぁ!?ふざけん…』
『だってそうだろう?俺が何しても大した反抗はしないし。』
『反抗してもやめねぇから 反抗しねぇんだよ!!』
『じゃあ俺にこうやってわざわざ言いにきても意味ないんじゃない?俺やめないよ?』


んなのわかってるけどよ…!!
こいつと話すだけで怒りがたまってきそうだ。切り上げよう…
と思い最後にミストレに


『何でも自分の思い通りになるって思ってんじゃねェよ。俺はお前の思い通りにはならねぇ』


と言った。
そっからの記憶がすっぽり抜けて思い出せない。


いろいろと考えてる途中に俺は
ミストレに顔面を思いっ切り殴られて現実に引き戻された


「ッ…………!」
「ぼーっとしないでこっち見なよ、エスカバ」


顎をつかまれ無理やりミストレの方に顔を向かされた


「ねぇ…反抗してみたらどう?俺の思い通りにならないんでしょ?」
「………っ」


ミストレは仰向けになっている俺の上に乗り
左手で俺の首を絞めつけた


「う゛ぁ……ッ」
「反抗しないってことは、これ以上痛い思いしたい…ってことなのかなぁ」
「ふざけ……ん……な………ッ」
「ふざけてないよ」
「ガハ…ッ」


鳩尾を思いっ切り殴ってくる
余計苦しい。息苦しい


「本当は俺さ」
「……」
「君を俺の部屋に監禁して鎖で四肢をつないで動けなくして
俺の事を愛するまで痛めつけて犯して君の事ぐちゃぐちゃにしたいんだよねぇ?
それをしないだけマシでしょ?それともされたいの」
「ッッ……………!!!!」


それを聞いて狂ってると改めて感じた
こいつ、本気で俺の事殺る。
そう感じた俺の眼からは涙が滲み出てきた


「お…れが何…したっていう……んだよ、なんで、俺なん…だよ」
「さぁねぇ?」


ミストレは相変わらず満面の笑みを浮かべている
俺の事を何回も何回も殴って蹴って痛めつけて
その度に大声で笑う


そろそろ体の限界だ
反抗しようにも痛めつけられて使い物にならない
もう疲れきって声を出す気力もなくしそうだ


痛みと苦しみと絶望と切なさ
いろいろな感情が湧き上がってきてくる

 
「エスカバ」


急に殴るのをやめてきた
声をいつもより低くして俺に問いかける
 

「もうヤダ?終わりにしたい?」

 
俺は涙ながらに頷き返した

 
「じゃあこうしようか。エスカバ…」
 
 
早く言ってくれ 早く解放してくれ 早く逃がしてくれ
そう何度も何度も心の中で呟いた
 
 
「三択、選ぶ権利をあげるよ。
 1・監禁されて一生俺の玩具になる
 2・記憶を消されて解放される
 3・この場で殺される
  
 さぁどれにする?」
 

そんなの選べるわけがない
恐怖で更に涙が止まらなくなる。
小刻みに体が震え、自由がきかない。
 
 
「ねぇ、どうする?」
「ゃ……だ……っ」
「何が嫌なの?」
 
 
全部嫌だ。
本当はそう言いたいのに
今ここでそんな事言ったら即殺されるに違いない
反抗しようにも、もうこんな体は使い物にならなかった
 
 
生きたい生きたい死にたくない死にたくない
逃げようとしても目の前の級友がそれを許さない
でも今までの大切な記憶を消されるのも恐ろしかった
 
 
だから 
 
  
 

「……ぉ…まえ、の……モノに…、…なっ……か………ら……ッ」
 
 
涙ながらに出した精一杯の声
その声はあまりに小さかった
 
 
「だ……から……ッ……」
 

その小さい声はミストレに届いたらしい

 
「……あはは、あはははははははッッ可愛いねェ!!エスカバ!!!
 君の事もぉっといじめたくなったよ!!!!!!
 これから君はずーーーっと俺の玩具!!!!あははっははは!!!」


 
 
…こんなはずじゃなかった


かつての面影はどこにも無く
今の級友は狂ってしまった

 
笑い声を響かせる彼の姿は
 
 


まるで悪魔のようだった

 

 
 





***************

 
……なんでしょう、これ…。



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