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「#エロ」のBL小説を読む
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- ナノ -

今度の土曜日遊びに来ないか、と。名前に誘われたのは、木曜日のこと。それだけでも驚きなのに、お母さんはいないから泊まって良いよと言われた時には、心臓が止まるかと思った。
泊まって良いって、それ、どういう意味か分かってんの?そう言いかけて、出かかっていた言葉をなんとか飲み込む。
初めて身体を重ねてから1ヶ月。俺は必死で耐えてきた。そりゃあ2人きりになればキスもハグもするが、それ以上のことはしないように努めてきた。なぜそこまで耐えているのか。そんなの、名前にがっつかれてるとか身体目当てだとか、そんな風に思われたくないからに決まっている。
名前と一緒にいられること自体は非常に嬉しい。だから俺は、平然を装って名前の誘いにのった。あとは俺の理性が保つことを祈るばかりだ。


◇ ◇ ◇



そうしてむかえた土曜日。名前の家で夕飯をご馳走になり、風呂にも入らせてもらった。夜が更けていくだけで心臓がバクバクしていて、まともに名前の顔を見ることもできない。今日はどこでどうやって寝るんだ?とか、もし隣で名前が寝ていたら今夜は徹夜だな、とか、考えるのはどれもこれもそういう方向のことばかりで、俺はつくづく馬鹿だなと思った。
とりあえず落ち着け。名前からさり気なく距離を取って触れないようにすれば問題ない。そんなことを自分に言い聞かせる。しかし、そんな俺に追い討ちをかける出来事が発生した。名前が、かなり際どいワンピースを着て風呂から帰ってきたのだ。
可愛い。しかもなんつーか、エロい。なんで今日に限ってそんな格好してんだよ。ホントに襲うぞ。…いやいや、駄目だ。頑張れ俺。


「名前がワンピースとか珍しいな」
「おかしい?」
「いや、可愛いけど。珍しいなと思って」
「…そっか」


名前は俺にタメ口で話してくれるようになった。そっか、の言い方がなんとなく元気なさそうだった気もするが、照れているだけだろうか。つーかマジで、なんでその服なんだよ。いや可愛いんだけど!そういう問題じゃなくて、俺の理性が切れそうだから。
俺は極力、名前の方を見ないようにして、興味もないテレビを眺めていた。そうやってどれぐらいの時間が経っただろう。やけに静かな名前の様子をちらりと窺うと、なんと泣いているではないか。
俺は慌ててテレビを消して近寄った。いつもならすぐに抱き締めてやるところだが、今の名前の格好で抱き締めたりなんかしたら身体が密着して絶対にヤバい。俺は触れることもできずオロオロするばかりだ。情けない。
できるだけ優しく泣いている理由を尋ねると、名前は信じられないことをきいてきた。自分のことを嫌いになったのか、と。そんなこと、死んでも有り得ないというのに、なぜそんなことを思うのか。不思議に思う俺に泣きながら必死に訴えてくる名前は、こんな時に不謹慎だとは思うが、途轍もなく可愛かった。
つーか。その服、わざとかよ。こっちの気も知らないで。俺は泣きじゃくる名前があんまりにも可愛くて、とうとう抱き締めてしまった。もうどうにでもなれ。なかば投げやりになりながら、俺は名前を泣き止ませるために頭を撫で続けてやった。
やっと落ち着いたらしい名前は、さっきの発言を忘れろと言ってきたが、忘れられるわけがない。そもそも、どさくさに紛れて結構大胆な発言をしていたが、あれは全て名前の本心なのだろうか。問いただしてやろうと思ってこちらを向かせたが、それがいけなかった。
たぶん名前は無意識だが、涙で潤んだ瞳で上目遣い。それは完全にアウトだっつーの。偉そうにこっちを見ろと言ったくせに、俺の方が名前をまともに見られない。もう隠しても駄目だと悟った俺は、恥を承知で全てを打ち明けた。
名前はひどく驚いている様子だったが、俺はカッコ悪いことこの上ない状況に耐えられず項垂れる。これでドン引きでもされようものなら、死んでしまうかもしれない。そう思っていたのに、名前から思わぬカミングアウト。
何が、私じゃ相手できない?だ。名前じゃなきゃ駄目なんだって、言わなかったっけ?散々煽られまくった俺はさすがに限界で。気付けば名前を床に押し倒してキスをしていた。その後は…まあ、想像通りだ。


◇ ◇ ◇



完全に余裕がなくなり、手加減もせず攻めまくってしまったせいで、名前は気を失ってしまった。ヤりすぎたなあとは思うが、今日は名前からのお誘いでもあったわけだから許してほしい。
あどけない表情なのに乱れまくったまま倒れている名前を見てまたヤりたくなる俺は、本当にどうしようもないと思う。が、男なら仕方ないと開き直った。
俺はとりあえず事後処理を済ませて、名前をベッドに寝かせてから、どうしたものかと考える。勝手に隣で寝ても良いものだろうか。まあ、付き合ってるわけだし、たぶん問題ない…よな?やましいことをしているわけではないのに、名前の隣にそーっと横になる俺は、さながら不審者だ。
何はともあれ、名前の体温が心地よくてうとうとし始めた頃、どうやら目を覚ましてしまったらしい名前がもぞもぞと動くのが分かった。寝たフリをしていたらどうするだろうか。ちょっとした好奇心で目を瞑ったままでいると、胸元に何かが触れた。最初は何をされているのか分からなかったが、何回か繰り返される内に意図が分かり、思わず笑いそうになる。俺が情事中キスマークをつけたから、名前もつけようとしているらしい。
なんでそんな、煽るようなことばっかりすんのかなあ…これがわざとだったらあんまりそそられないのかもしれないが、何の下心もなくやってんだもんなあ…こんな状況で俺の理性とか、あってないようなもんじゃね?
俺は名前の顎を捉えて自分の方へ向かせると深く口付けた。今日は我慢しねーって決めたから、思う存分付き合ってもらうつもりだ。なんだかんだ言って俺の相手をしてくれる名前は、俺が名前のことを愛しているのと同じぐらい、俺のことを愛してくれているんだと思う。
翌朝、なかなか起き上がれなかった名前を見て、さすがにこれからは少し手加減した方が良いかなと反省したが、よく考えたら手加減できるほどの余裕ねーじゃん、俺。


ご馳走様でした、ってな



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