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桜舞う4月。とうとう俺は3年生になった。短い春休みを終えて、校内には生徒達の声が響き渡り活気付いている。俺は部活でほぼ毎日学校に来ていたから久し振りという感覚はないけれど、普通の生徒は制服を着ることすら久々だろう。
人だかりができている方へ歩いて行くと、俺に気付いた女の子達が近付いてきた。及川くんは6組だよー、と。自分で確認するより早く女の子達が教えてくれた。
自分でも貼り出された薄っぺらい紙を見て確認。本当だ、俺は6組。岩ちゃんは5組でマッキーは3組、まっつんは1組か。見事にバラけたものだ。いつものメンバーと違うクラスにはなったものの、何となく誰がいるのかなーと同じクラスの生徒の名前を見ていると。あ、見つけちゃった。そこには数週間前に出会った彼女の名前。
俺は鼻歌を歌いながら自分の教室へ向かった。


◇ ◇ ◇



足取り軽く教室に入ると一斉に集まる女子の視線。
及川くんだ。やっぱりカッコいいねー。同じクラスでラッキー!あちらこちらでそんな黄色い声がきこえてくる。反対に男子達からの視線は少し痛いような気もするけれど、そんなことはどうでもいい。
俺を遠巻きに囲む女の子達に愛想よく微笑みながら、目指すのは彼女のところ。


「おはよう、名字ちゃん」
「えっ…あ…あの時の…」
「覚えてくれてた?良かったー!同じクラスだねー!俺、嬉しい!」
「それはどうも」


彼女の席に近付くなり終始にこやかに話す俺とは打って変わって、名字ちゃんは僅かに戸惑った様子で俺を見ていた。
うん、なんとなく予想はしてたけど、思っていた以上にドライな反応だね。普通そこは、私も嬉しい!とか言ってにっこり笑うところなんだけど。まあそう簡単に俺の思い通りにならないところがイイんだよねー。
改めてこれからよろしく、と微笑む俺に、彼女は小さく、よろしく、と返してくれた。


◇ ◇ ◇



始業式の日は午前中で授業が終わるし部活も休みだ。久し振りに体を休めて、いつものメンバーでゲーセンでも行くか。そんなことを考えながら席を立つ。すると、タイミングよくマッキーが現れた。


「及川ー。昼飯食いに行かねー?」
「いいよー。岩ちゃんとまっつんは?」
「ここにいますけど」
「昼飯、どこ行くんだよ」


これもまたタイミングよく現れたまっつんと岩ちゃん。どこ行こっかー、なんて話しながら教室を出ようとしたところで、視界の隅に捉えた彼女の姿。
ダメ元で昼ご飯のお誘いしちゃおっかなー。いや、ダメな確率高すぎか。あーでもなー。少しぐらい強引に誘うのもあり?考えること数秒、俺は行動することにした。弱気なのは自分らしくない。


「名字ちゃん、これから暇?」
「…最初から気になってたんだけど、その呼び方イヤ…」
「その話は後できくからさ、一緒にお昼ご飯行かない?あそこの3人もいるけど…ほら、名字ちゃんのお友達も一緒にさ」


名字ちゃんの発言をさらりと受け流しつつ、隣にいる大人しそうな女の子にちらりと視線を送って、にこりと笑いかける。するとその子は少し頬を赤く染めて、どうする?と名字ちゃんに問いかけた。
うん、これこれ。普通の女の子の反応ってこれなんだよね。
俺が期待の眼差しを向けて返事を待っていると、名字ちゃんは本当にほんの一瞬考える素振りを見せて、きっぱりと一言。


「行かない。行くなら琴乃と2人で行く。友達が待ってるみたいだから行ったら?」
「えー及川さんショックー!親睦深めるチャンスなのにー」
「…なんで及川くんは私と親睦を深めたいの…?」
「あ!やっと俺の名前呼んでくれた!よし、この流れで行こう。お昼ご飯!ね!お友達ちゃんも良いよね?ね?」


俺は名字ちゃんの手を取って3人の元へ向かう。この子達も一緒にお昼ご飯行くからー、と3人に伝えれば、女の子2人に拒否する余地はなかった。
我ながら相当強引だと思う。とは言え、お友達ちゃん(確か、ことのちゃん?)は押しに弱いのか、私は良いけど、と言っているし、困惑しながらも俺に掴まれた手を振り払う様子がないところを見ると、名字ちゃんも本気で嫌がっているわけではなさそう…だと思いたい。
咄嗟とは言え繋いでしまった手からは、名字ちゃんの低めの体温が伝わってきて柄にもなくドキドキしたりして。名字ちゃんはどんな顔してるんだろう。そっと様子を窺って、後悔。名字ちゃんは今まで見た顔と変わらない、相変わらず綺麗だけど何を考えているのか分からない表情のままだった。
そりゃそうか。無理矢理俺が連行してるんだもんね。うん、今はいいよ。いつか俺がいろんな表情させてみせるんだからね!


期待を孕む指先


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