始まりの一声は、これだった。 「ねーちゃん達、美人だねぇ。……ボク等とお茶しない?」 (帰蝶はんの顔を見ながら)「どなんします、きぃちゃん」 (にこり)「暇潰しには丁度やと違いますん?」 「ほな、ウチは遠慮しときますわ。きぃちゃんのお楽しみを邪魔したらあかんからなぁ」 「お気遣い、ありがたく頂戴させてもらんます」 (にこにこしながら。男達の無様な姿を楽しみながら)「きぃちゃん、手加減せなあかんどすえ」 「わかっとるよりっちゃん。…どんくらいもつやろなぁ」(にやり) 「きぃちゃん、周りに黒いもんが出とんとちゃいます?……あ、その方もう白眼むいてはるなぁ」(やめろとは言わない) 「えーそんなもん見えまへん。ウチ、旦那様以外の男なんか見えんもーん」(白々しい!) 「まぁ、きぃちゃんの旦那さんは幸せやなぁ。そいに比べてウチん殿方は……あぁそろそろお稽古のお時間どす。お戯れはまた後ほどになさって家に戻らんとではあらしゃいません?」 「何言うてるの!りっちゃんの旦那はんかて素敵な方やん。なんちゅうかこう、頭足りひん感じがかわいらしゅうて(失礼)…せやね、ここらでお暇しましょかぁ」 「いややわぁきぃちゃんまで。あの殿方、あほう通り越してはる」(屍の山を越えつつ) 「そーいうとこもかわいらしいやんか!りっちゃんがしっかりしとるし、大丈夫やわぁ」(にこにこ) 「そなかてウチ、他所では猫被うとるし、はぁ、祝言もめんどいわ。きぃちゃん良く耐えとんなぁ」 「せやの?りっちゃん面倒臭いことしてはるんやねぇ。ウチ?…だってウチは旦那様愛しとるもん」 「お利口さんしとかな師範代(父)が煩くて敵わん。……愛して、る……なぁ。幸せなことやろなぁ。ウチにも出来るやろか」 「できるてりっちゃん。ウチかてはじめはあの人のこと大っ嫌いやったもん」 「……ウチがあの人愛しても、あの人がウチを愛することはあらへんのやろな……想い人がおらすんよ、殿方の」 「まぁ殿方の!…うーん、籍入れてもうたら勝ちやないんやねぇ…どんな人なん?」 「そやなぁ……殿方にしてはちまいお方や。伝次はん……ウチの許嫁の兄さんなんよ。時々お華とかを教えとるんやけど賢いお方やなぁ。剣道が達者で、そりゃ、強いんどすえ」 「はぁ…さよか…。ウチには経験あらへんからようわからんけど…そんなになん?兄弟愛とちごて?」 「兄弟愛で自慰が出来ますのん?」 「…それはできん…わなぁ」(苦笑) (苦笑)「……まぁお家のために、やれることをやるのがおなごの運命やと思おとりますえ」 「おなごの使命は…結局子ぉ生んで一族に尽くすことさかいなぁ」 「ほんに、めんどいわぁ……」(家の門が見えて来た)「ほな、今日はこの辺で」 「またお茶しよな、りっちゃん!」 「また、お団子食べに行こな、きぃちゃん」 女の道は一本道。 泣くも笑うも自分次第。 |
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