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メルト/ワールドイズマイン

・メルトとWIMのごちゃまぜはなし
・ただのバカップル佐政






「ねえ、伊達ちゃん」
こんにちはみなさん。気づけば身を切るような寒さも終わりすっかり春の陽気が近づいた今日この頃。
街を歩く人の顔も心なしか晴れやかです。
しかし俺の隣を歩く伊達ちゃんはなんだかいつもより不機嫌そう。
ひさびさのデートだというのにいったい何が不満だというんでしょうこの人は。

「ねえったら」
「……なんだよ」

手をつなぎたい、その一言を言いたいのにこんなに顔をされたら俺には言い出すタイミングが掴めません。
誰か話題、話題をくれ。なんでもいいんだ日銀の株価がどうだの昨日見たテレビがすごかっただの桜がもうすぐ満開だのこの子の気を引けるような話題をくれ。

「その、今日は、なんだか、テンション低いね」
「だから?」

ごめんなさい、顔が、怖い。
町を歩けば誰もが振り返るそんな美貌が今はすっかりと歪んでいる。普段は君を見ればきゃあきゃあ騒ぎ立てる女の子たちも今日は遠巻きに眺めるくらいで、俺はこんな時なのにもったいないなあとか思いました。

「……なに考えてんだよ」
「ごめんなさいすみません何も考えてないよいや伊達ちゃんのことは考えてるけど」
しか考えてないけども。
「ふうん」
冷たいひたすらに。覗き見た横顔は君自慢の(と勝手に思っている)長いまつげが影を作っていた。
君の笑顔が見たいんだけど。そんなことはお構いなしに君の口は3を作っている。


(ふふ、かわいい)


そのあひる口がキスしたいと誘っているように見えるんだけどどうしよう。でも外だしなあ人前だしなあ。

俺がそんなことで迷っていると「あ」と伊達ちゃんが声をあげる。すると顔に冷たいものが触れた。……どうやら今日は本当についていないようだ、天気予報にまで嘘をつかれてしまったら当初の予定が全て台無しだ。今日は中学生のデートみたいに公園をぶらぶらして、桜が咲いてるらしいからお花見でもしようなんて約束して、あまり人前で花が好きだと言わない君の綻んだ顔が見たくてこの日を選んだ(降水確率0%だった、らしい)俺の努力は水の泡となったのだった。

雨降っちゃった、ねと笑う俺の声は乾いていた。当たり前だ。何一つ上手くいっていないぞこの野郎。頑張ってセットした髪がぐにゃんと寝てしまったのは雨だけが原因ではないのだろう。仕方ないので伊達ちゃんに雨宿りをしようと目の前の木の下に誘った。


暦では春なのだがそれでもこの時期の雨はやっぱり冷たい。
隣を見ると彼も寒いのだろう細い肩を震わせていた。その姿に歯をカチカチ鳴らしながら俺はパーカーの裾をひらひらとする。
入りますか?なんて冗談混じりで目で訴えてみたら今日一番の良い笑顔でばかやろうと言われた。おう辛辣。

「しょうがない、から、入ってやる」
「え、入るの?」
「うん」

笑顔からあっという間にぶっきらぼうな表情に戻った伊達ちゃんは俺の動揺をよそに内部に侵入した。パーカーの裾を正面に合わせようとしているらしくぐいぐい引っ張ってくるが元よりそんな風に着るものと想定していないパーカーは締め付けられる俺の体と共に悲鳴をあげている。細身とはいえ、大の大人が二人も入っているのだから当たり前ですっていやいやそんなことより。


目の前で暖を取ろうとパーカーに巻きつく彼の後頭部が目に入る。俺と違って一度も染めたことのないだろう艶のある黒髪が細い首に落ちている。その白さや彼の匂いに情けないくらいに心臓が跳ね上がった。
細い肢体、艶やかな髪、耳に残る低い声、ちらりと見える薄い唇に俺の意識は囚われる。

いつだって君に惹かれ、君が欲しいと請う。
君の好きなところなんてたくさんあるけれど、その全て奪ってしまいたいと思ってしまうなんて、俺は異常だ。

少しずつ暖かくなってきたのか彼は満足そうにしていたけど俺は一向に暖かくならない。かちかちと微かに震える歯にまるで餌を前に唸る獣のようだ。その細い首に噛みついてしまいたい、そう思ってしまうほどに。

沸き上がる熱情に押され、柔らかく流れる髪を一束だけ持ち上げてキスをした。

彼が驚いた声を出していたがそんなことは知らない。
なんて綺麗な、俺のお姫様。
少女趣味はなかったはずなのに、そんなことをうそぶいてしまうほどに。

「愛してるよ」
耳まで真っ赤にしてくれる君が愛しくないはずがない。段々と小雨になる雨にまだ桜は散っていないだろうかと俺は中学生デートの再開を期待した。

「……なんてかっこつけてみたんだけど、どうかな伊達ちゃん」
こちらを振り向く彼は普段中々見られない顔で。今日はやっぱり良い日になりそうだと目の前の彼を抱き締めた。







なにこのバカップル!!!

良いとこ見せたくて伊達さんの前でかっこいい付けたはいいもの顔真っ白にして体ごと歯を震わせる佐助の姿を想像しながら書いてました。
かっこつけ佐助は中々見られないので過剰に真っ赤になった伊達さんのはなしです


というか書いている途中でWIMとメルトが混じっちゃってボツになった伊達さん視点のおでかけシーンがあったり→








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