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賢者と賢者の魔法使いの叙任式は、今までにないくらいの盛り上がりを見せた。バルコニーに立てば、人間たちからの歓迎の声と笑顔を向けられる。拍手喝采の歓声に包まれ、みな嬉しそうに笑顔を浮かべた。
「みな、楽しそうじゃ」
「良かったのう、良かったのう」
人々を含め、魔法使いたちの喜ぶ様子を見て、双子は何度も頷いて見せる。
「正装なんて初めて着ましたよ」
「僕も。お揃いって変で面白い」
「ふん。悪い気分じゃねえな」
自分たちが来ている衣装を見て、3人は興味深そうにつぶやく。
「ふふ、ドレスもお揃いも素敵ね」
真白な軍服のような、しっかりとした衣装の裾を掴みながら、ターリアは嬉しそうに顔を緩ませた。
魔法使いたちの衣装を仕立てのはクロエだ。それぞれ違ったデザインに、出身国で共通の色を添えつつ、全員お揃いの衣装という、とても素敵なものだ。
「これなら、スノウとホワイトの大人姿も見てみたかったわね」
「嫌だよ」
「それは遠慮する」
「そう? 私は大人の方が見慣れているのよねえ」
「それ、あなたの前だけでしょう」
「むむ、酷い言い草じゃのう」
「ほほほ、後でクロエに頼んでみるかのう」
双子の大人姿が見てみたいと呟いてみると、3人は顔をしかめて嫌だと答える。しかし、双子はすでにやる気でいるらしく、クロエに頼んでみるとはしゃいでいる。
それを横目に、改めてバルコニーを見渡す。みんな笑顔で、バルコニーから手を振っていた。今まで忌避されてきた自分たち魔法使いが、こうして人間たちに受け入れられる光景を見て、感慨深くなった。
「ねえ、それよりも、僕へのご褒美は?」
すると、背後からねっとりと甘えた声でオーエンが囁いてきた。早くしろと強請るように服の裾を引っ張って覗き込むオーエンに、ターリアはクスリと零す。
「そうね。事が終わってから行きましょうか」
「俺も行きます」
「は? 来るなよ」
「美味いもんがあるなら、俺様も行くぜ」
「「我らも行くー!」」
<大いなる厄災>との戦いは、まだまだ先だ。そこにたどり着くまでに、多くの問題もあるだろう。しかし、こうして人間たちが魔法使いに対する考えが変わったように。この壊れかけの世界も、なにか変わるのではないかと、そんな期待をした。
「みんなも、きみも。よく頑張ったね、賢者様」
「賢者様、ありがとうございます。どうか私たちを、導いてください」
どうか、幸福な結末になりますように――――。
END