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04


翌日、その日は酷く寒かった。布団に包まって暖を取ろうと身体を丸める。指先と足先がひどく冷えた。「わー、見てみろヨヅキ! 雪が積もってるんだゾ!」はしゃぐグリムの声に起こされ、窓の外を見るグリムの後ろから外を眺めた。「どうりで冷えると思った」外は一面真っ白だ。


「火の妖精ってヤツらも震えてるかもしんねぇな。薪をもっていってやるか」


グリムに頷き、2人は薪をもって学園の食堂へ向かうことにした。



■ □ ■



食堂の暖炉に薪をくべる。すると火の妖精が姿を現し、パチパチと薪を燃やして辺りを温めた。その温かさにほっとする。


「あったかい・・・・・・」
「ほぁ・・・・・・オマエたちが暖炉に住み着いてる火の妖精か。そばによると毛皮まであったまるんだゾ」


冷えた身体を温めるように、グリムと夜月は暖炉の前に座り込む。「ん? なんだ? 薪の燃える音に交じって、軽快な包丁のリズムと肉の焼けるジューシーな音が!?!?」トントンとする音や焼ける音が食堂に響いた。「良い匂い・・・・・・スパイスの香りだ」漂ってくる香りに食欲をそそられる。「キッチンの方からだ。行ってみようぜ!」グリムと夜月は香りのするキッチンをこっそりのぞきに行った。


「野菜に火を通し終わったら解凍してあった肉を茹でてくれ。油が温まったらナッツを入れるのを忘れるな」「はい!」キッチンを覗くと、そこには数人の生徒たちが次々と大量の料理を作っていた。「にゃんだぁ? 冬休みのはずなのに、生徒たちがいっぱいいるんだゾ!」グリムの言う通りだ。「ほんとんどの人は帰ったのに」ホリデーにはほとんどの人が帰るため、夜月は不思議に思った。


「ん? 君たちは・・・・・・」
「あ、確かマジフト大会の時に・・・・・・」
「ああ、大会前に怪我をした時、少し話をしたな」


「確か・・・・・・ヨヅキとグリム、だったか?」目があったのはマジフト大会で話したスカラビア寮の人だ。「物覚えがいいヤツなんだゾ! オマエの名前は、ええっと・・・・・・」グリムは頭を捻る。「ジャミルだ。ジャミル・バイパー。スカラビアの副寮長をしてる」ジャミルは改めて自己紹介をした。「俺は昔から人の顔と名前を覚えるのは得意でね。それに、君らは入学以来とにかく目立つからな。この学園で君らの名前を知らないヤツはいないんじゃないか?」ジャミルの言葉にグリムは喜んだが、夜月は少し苦笑を零した。


「ところで・・・・・・君たちは冬休みなのに何故学園に?」
「オレ様たちには孵れる実家なんてねぇからな」
「学園長から火の番も任されましたしね」


「へぇ・・・・・・そうなのか。学園長にね・・・・・・」ジャミルは頷いた後、なにかをぼそりと零した。「ん? なんか言ったか?」とグリムが聞き返した。「あの学園長に認められるなんて、君たちはすごいな、と」するとスカラビア寮生が話しているところに申し訳なさそうにしてジャミルに話しかけた。どうやら料理の下準備が終わったらしい。「このスープ、美味しそうだけど嗅いだことのない匂いがするんだゾ」グリムは興味津々に料理を見詰めた。「それは熱砂の国の伝統的な家庭料理で・・・・・・ああ、そうだ」


「ここで出会ったのも何かの縁。良ければ君たちも食べていかないか?」
「え、でも・・・・・・」
「にゃにっ! いいのか!?」
「ああ、もちろん。料理の完成まであと少しだ、君たちも手伝ってくれ」


食べ物につられ、結局夜月とグリムは手伝うことになった。この後の予定もないことだし、することもない。ジャミルの指示に従って他のスカラビア寮生とともに手際よく手を動かしていると、あっという間に料理は完成していた。「よし、こんなものだな。お前たち、料理を寮へ!」ジャミルの言葉に従い、寮生は料理を次々と寮へ運び出す。


「そういえば、どうしてスカラビア寮は学園に残ったんですか?」
「そうなんだゾ。冬休み中なのに、なんで学園に残ってるんだゾ?」


「・・・・・・それは・・・・・・」素朴な疑問を訪ねれば、ジャミルをはじめ他の寮生たちも顔を強張らせた。「それについては、話すと長くなる」ジャミルは深刻そうに言った。なんだか、また厄介ごとな気がする。「スカラビアは全員、寮長の命令で・・・・・・」寮生の一人がこぼした。「帰りたくても帰れないというか・・・・・・」続けて他の寮生が零す。「シッ。やめないかお前たち。もとはといえば、俺たちの責任だろう」ジャミルはそれをすぐさま咎めた。


「――さ、料理が冷めてしまう。早くスカラビアへ向かおう」


「スカラビアはいつでも夏のように暖かい。ちょっとした南国気分が味わえると思うぞ」暗い空気を払拭し、ジャミルは明るく2人にいった。「やっほー! そんなの楽園なんだゾ〜! ヨヅキ、早く行こう!」グリムはウキウキとスカラビア寮へ駆け出していく。「ちょっと、グリム!」先走るグリムを止めに行こうとすると「君たちが来てくれたら、寮長も喜ぶだろう」とジャミルの言葉に足を止め彼に振り返った。


「――来てくれるな?」


その瞬間、なんだか頭がぼんやりとして意識が遠のいて行った。「――もちろんです」ぼんやりとした中、夜月はそう口にしていた。「・・・・・・君を招待できてとても嬉しいよ、ヨヅキ」ジャミルは口端を上げた。「さあ、行こう。スカラビアへ」それに従い、夜月たちはスカラビアへ足を踏み入れることになった。