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021


「あー、追いかけっこもいい加減飽きてきた」しばらく逃げ回っていると退屈そうにフロイドが呟き始めた。「あと少しですよ、楽しみましょう」そんなフロイドを宥めつつ、ジェイドは逃げ回る5人を追い詰める。


「おい、ヨヅキ! このままじゃ陽が落ちちまうぞ!」
「本当にこの作戦で大丈夫なのか?」
「絶対に大丈夫」


陽が落ちてきてジャックとグリムが声上げたが、夜月は自信満ちた顔で大丈夫だと告げた。だって、協力してくれているのは"あの人たち"なんだから。



● 〇 ●



「シシシッ! うまく持ち出せましたね」
「フン、お前の手癖の悪さには恐れ入るな」


一方、オクタヴィネル寮ではレオナとラギーの姿があった。「にしても、この契約書の寮すごいッスね。5、600枚はありそう」レオナの手に持ったアズールの『黄金の契約書』と見てラギーが言う。「この学園に入るずっと前から悪徳契約を繰り返してコツコツため込んでたんだろうぜ」レオナもそれに視線を落とした。「これで契約書はVIPルームの外に持ち出せた。後は・・・・・・」


「『俺こそが飢え、俺こそが乾き。お前らの明日を奪うもの――』」
「待ちなさい!!」
「・・・・・・おっと、もうお出ましか」


振り返れば焦った顔でこちらに近寄ってくるアズールの姿があった。「それ以上こっちに近づくなよ。契約書がどうなっても知らないぜ」片手に持った契約書をちらつかせながら言う。「か、返してください・・・・・・それを返してください!」アズールはいつもの様子から想像のつかない様で言った。「その慌てぶりを見るに、アイツの予想は当たってたらしいな」アズールの様子を見て、レオナがそう言う。「なん・・・・・・だって?」アズールは目を見開く。


――時間は昨夜に遡る。


「つまり、金庫に保管されている時なら、契約書は破れる状態なんじゃねぇかって言いたいんだな?」
「そうです。だって、必要なんて無いでしょう?」
「ん? んん?」
「あっ、言われてみれば確かに。ちょっとおかしいッスね」


レオナと夜月の答え合わせにラギーはハッとする。「アズール君たちが言う通り絶対に破けないっていうなら、厳重に金庫に入れて守る必要、なくないッスか?」ラギーは続ける。「その辺に置いときゃいいッスよね。レオナさんの財布みたいに」机に置きっぱなしの財布を指さしながら言った。「ハッ! 金庫といえば・・・・・・アイツ、金庫にちょっと傷がついただけでめちゃくちゃ起こったんだゾ」そこでグリムは今日の出来事を思い出した。


「なるほどねー。大事なもんは金庫にしまうのが常識だから、疑問にも思わなかったッス」
「見え透いた罠に引っかかってんじゃねぇよ」
「アズールのヤツ、二枚舌どころか八枚舌なんだゾ! 騙された!」
「なんにせよ、金庫から契約書を持ち出してみれば話は早そうだな」


――そして、時間は巻き戻る。


「ヨヅキさんが・・・・・・!?」


レオナから話を聞いたアズールは目を見張った。「なぜだ、なぜあいつは僕の邪魔ばかりしてくる!?」アズールは叫ぶ。「イソギンチャクから解放したって、アイツには何の得もないだろう!?」そう続けたアズールに「それについては、俺も同意だな」とレオナも頷いた。「そこでだ。なあアズール、俺と取引しようぜ」ニヤリと口端を上げ、レオナはアズールを見た。「・・・・・・は?」レオナは契約書を掲げた。


「この契約書をお前に返したら、お前は俺に何を差し出す?」
「な、なんでもします」


アズールはテストの対策ノートでも、卒業論文の代筆でも、出席日数の水増しでも、なんでも願いを叶えるという。「なるほど、実に魅力的な申し出だ」レオナは頷きを見せた。「なら――」ほっとしたアズール。「だが・・・・・・」


「悪いが、その程度じゃこの契約書は返してやれそうにねぇなぁ」
「・・・・・・えっ?」


「俺はな、今、アイツに脅されてんだよ」目を細めて口端を上げたままレオナは言う。「契約書の破棄に協力してくれなきゃ、毎日朝まで毛玉と一緒に部屋の前で大騒ぎしてやるってなぁ」レオナはため息を落とした。「は・・・・・・?」意味が分からないという顔をするアズール。「お前にオンボロ寮をとられ梨まったら、俺が寝不足になっちまう。アイツらにサバナクローから出ていってもらうためにも、契約書コイツは破棄させてもらうぜ」ひらひらと契約書をなびかせる。「まさか、そんなことで・・・・・・!?」フッとレオナが笑う。


「悪党として、ヨヅキに一歩負けたな、アズール」
「う、うそだ・・・・・・やめろ!」
「――さあ、平服しろ! 『王者の咆哮キングス・ロアー』!」
「やめろおおおおお!!!」


『黄金の契約書』は、一瞬にして砂へとかえった。