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005


オクタヴィネル寮から戻ったジャックは夜月は、ひとまず状況確認をするためにオンボロ寮へときていた。談話室のソファに座り、状況を整理する。

契約をした人たちはテストでいい点数を取るためにアズールと契約し、まんまと騙された。上位50名に入るのが条件だったみたいだが、あれだけの人数の生徒と契約していれば大半の契約者があぶれることになる。アズールはそれを狙っていたのだろう。

サバナクロー寮のレオナと続き、オクタヴィネル寮のアズールも悪どい。最初のハーツラビュル寮のリドルが可愛く見えてくるのはなぜだ。


「ったく! 自分の力を周りに示せる機会を棒に振るなんざ、それこそバカだ」
「学園の生徒全員がハウルくんのように自意識強めで面倒くさい・・・・・・いえ、真面目だったら私も苦労しないんですがねぇ」


驚いて2人して振り向くと、ため息をつくつクロウリーがそこにいた。「はあ・・・・・・今年もアーシェングロットくんの商売を止めることができませんでした」と嘆くクロウリーに「何か知ってるんですか?」と尋ねる。どうやらアズールが生徒にばら撒いたテスト対策ノートは、事前に出題用紙や解答を盗み見るなどの不正行為で作られたわけではないという。ナイトレイブンカレッジ過去100年分のテスト出題傾向を徹底的に調べ上げ、自分で練り上げた虎の巻みたいだ。


「100年分・・・・・・それは凄い」
「ん? 待てよ。つまり、不正はないことが逆に厄介ってことか?」


クロウリーはそうだと頷く。教師の立場として、いち生徒が合法的な努力でテストの対策ノートを作ることは禁止できない。そして親切で友人に勉強を教えることも禁止できない。禁止したら勉強をするな、友人と協力するなと言っているようなものだ。教師の立場として、それはできない。


「そういえば、先ほど『今年も』って言ってましたけど」
「まさか、去年もこんなことが?」
「ええ。これほど大きな騒ぎにはならなかったんですが、今年は噂が学園中に流れていたようで」


今年は『テストでいい点数がとりたいならモストロ・ラウンジへ』という噂が流れ、大量の生徒がなだれ込んだらしい。契約違反をすればひどい目に遭うという内容は、強固な守秘義務で広がらずに。結果、大量の生徒がアズールと取引をすることになった。これはつまり、ほとんどの生徒がズルをしたことになる。テストの意味をなさないこの状況に、呆れを通り越してしまう。

それだけでなく、アズールは去年、生徒から取り上げた能力を元に戻すことを条件に『モストロ・ラウンジ』の経営を許可するよう持ち掛けたらしい。ナイトレイブンカレッジは優秀な魔法士を輩出する歴史ある名門校。それなのに魔法をとられてしまっては、学校の評判も落ちてしまう。「なんつー野郎だ・・・・・・あのレオナ先輩が近づきたがらないのもわかるぜ」学園長まで脅すとは、ジャックもそれを聞いて一歩引いた。「なんでこの学園にはちょっと問題がある生徒ばかり入学してくるんでしょう! お〜いおいおい!!」ウソ泣きをする学園長が、ちらりと夜月を盗み見た。
ああ、この流れ・・・・・・嫌な予感がする。


「と、いうわけでユウくん。こんなことをやめるよう、アーシェングロットくんをせっとくしてくれませんか?」
「説得を聞き入れないタイプじゃないですか、あのひと」
「はぁ・・・・・・最近オンボロ寮の食費が非常にかさんでいるんですよねぇ・・・・・・」
「・・・・・・」


ああ、どうしたものか・・・・・・とつぶやいてはちらりと見てくる。決して自分のせいじゃない。あれもこれもと大食いグリムのせいだ。「気にしなくていいんですよ、私、優しいので」ニッコリと笑うクロウリーに項垂れる。「この教師にして、あの生徒ありって感じだな・・・・・・」すこし憐れむようにジャックが言った。「・・・・・・やるだけやってみます」仕方くため息をつきながら夜月は答えた。そう聞くと頼みましたよと言って早々にオンボロ寮を退出していく。夜月は深くため息を落とした。


「・・・・・・で、具体的にはどうするつもりなんだ?」
「そうだね・・・・・・まずは情報集めかな」
「ああ。狩りは基本相手をよく知るところから、だ。お前、わかってんじゃねーか」


フッと笑ったジャックに夜月も笑みを浮かべた。「それに、エースたちももう少し痛い目見て反省した方がいいしな」というジャックに「本当にね」と頷く。