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003


期末テストの集計が終わり、とうとう待ちに待った成績優秀者上位50名のリストが張り出される日になった。その日はいつも以上に周りの人たちはそわそわとしていて、それはグリムやエースやデュースも同じだった。


「今日の授業はここまでだ」


今日最後の授業が終了する。やっと終わったと、夜月は小さく背伸びをした。このあとに廊下に張り出された順位を見に行こう。そわそわして気にしてるみたいだし、エースたちと一緒に行こう。教科書をトントンと机に音を鳴らしてまとめ、クルーウェルが「では、解散」と口に出した瞬間だった。


「・・・・・・・・・・・・え?」


突然クラスの大半の生徒が一斉に立ち上がって全力疾走で教室を出て行った。いつもならクルーウェルが出て行ったあと、のろのろと教室を出ていくのに。ドタドタと足音を立て全力疾走して廊下に向かうクラスメイト。そこには隣にいたエースとデュースやグリムの姿もあった。残ったクラスメイトと夜月は唖然として彼らが出て行った扉を眺めた。


「ふん、やはりな」


ただクルーウェルだけはその様子を見て呆れたように納得していた。呆然と扉に目を向けていた夜月がそれを聞きクルーウェルに視線を移すとたまたま視線が交わった。目を丸くして状況を理解していない夜月を見て、クルーウェルは小さく笑みをこぼし機嫌良く歩み寄ってくる。


「その様子だと、お前はアレに手を出さなかったようだな」
「あれ、とは・・・・・・?」


意味の分からない夜月を見てクルーウェルはフッと笑う。その意味は教えてもらえないみたいだ。「今回のテストでは自力で頑張ったようだな、仔犬」いい子だと言って赤い手袋に包まれた手で犬にするみたいに頭を撫でる。「先生の補習のおかげです」ほめられ頭を撫でられたことに嬉しそうに顔をほころばせる。クルーウェルは頭から頬へと手を滑らせ、少し顎を持ち上げるようにして指で撫でた。


「頑張ったお利口な仔犬にはご褒美をやらねばなあ?」


指が頬をなぞる。くすぐったくて身をよじる夜月に、クルーウェルは口端を上げた。「楽しみにしておけよ」クルーウェルはそれだけ言うと教室を後にした。夜月も教科書を抱え、足早に廊下に出て張り出された順位表へと向かった。



〇 ● 〇



廊下を出ると大量の生徒が混雑しながら順位表を見ていた。人をよけながら進んでいくと、順位表に自分の名前を探している3人を発見する。「3人とも名前はあった?」3人に近寄って声をかける。


「・・・・・・無い、オレ様の名前が入ってねぇんだゾ〜!!」
「ぼ、僕の名前もない・・・・・・」
「あらら〜」


自分の名前を見つけられず嘆く2人。「ちょっと待て。名前の横に全教科の総合点が書いてあるけど・・・・・・上位30人以上が、満天の500点じゃん!」エースが全科目総合点を見て驚愕。「「ま、満点〜!?」」デュースとグリムも続いて大声で叫んだ。いくらなんでも、30人以上が総合満点なんておかしすぎる。「それより・・・・・・オレ様、50位以内に入らねーと『契約違反』になっちまうんだゾ!」グリムが青ざめた顔をして言った。「契約違反・・・・・・?」夜月はそれに首をかしげる。


「え・・・・・・『契約』って、グリム、まさかお前・・・・・・」
「エース、その顔はお前ももしかして・・・・・・」


3人が顔を見合わせた途端、シュワアアと何かが光った。「ふな”っ!? な、なんじゃこりゃ〜〜!?」目を開けると、3人の頭にイソギンチャクが生えていた。いや、よくみれば周りにいた人のほとんどが頭にイソギンチャクが生えていた。「グリムもアイツと契約してたのか!? 卑怯だぞ!」頭のソレを見てデュースが指をさす。「そういうデュースの頭にも生えてるじゃねーか!」負けずエースも言い返す。「こんなもの・・・・・・いでででっ、取れねぇんだゾ!」イソギンチャクを引っ張るが、まったく取れない。


「・・・・・・え、なにこれ・・・・・・」
「騒がしいと思ってきてみれば、お前らか。何やってんだ?」
「あ、ジャック。それが、なんというか・・・・・・」


3人の様子を目を丸くしてみていると、騒ぎを聞きつけたジャックがやってきた。「ジャック、お前も契約を・・・・・・って。イソギンチャクが生えてない・・・・・・だと!?」ジャックを見てデュースが目を見開く。「見た目のわりに超真面目クンかよ!」続いてエースも理不尽に怒鳴る。「はあ? 何言ってんださっきから」ジャックの疑問は当たり前だ。それは夜月だって聞きたい。


「っつーか、お前らの頭のソレ、なんなんだ?」
「また面倒なことしてるんじゃないでしょうね?」


じとりとグリムを見やる。「コレは、その・・・・・・ふな”っ!?」おどおどとしてグリムが何かを言おうとしたその時、突然頭のイソギンチャクが引っ張られた。「あ、頭がイソギンチャクに引っ張られる!」それはデュースとエースも同じだった。「いでででっ! 頭がもげる〜!」引っ張られる痛みに3人は顔を歪める。「絶対服従ってこういうことだったのか・・・・・・っ」そのまま3人と周りにいたイソギンチャクが生えた人たちは、イソギンチャクに引っ張られて歩いていく。

「なんだ? 頭に生えたイソギンチャクに操られてるみてぇに歩いてったな」ジャックと夜月はその様子を後ろから眺める。なんとも間抜けな絵面だ。彼らの背中を眺め、夜月はそっとジャックのそでを引っ張り、イソギンチャクが向かった方を指さした。


「取り合えず、何が起こってるのか確かめに行こう」
「は? 何で俺まで。俺には関係ないだろ」
「・・・・・・マジフトの傷が痛いなあ」
「チッ・・・・・・」


少し意地悪く言うと、ジャックは舌打ちをする。「お前、だんだんこの学園の空気に染まってきたな。俺を使おうなんざ、良い度胸だ」ムスッとした顔で見下ろしてくるジャックに、行ってくれるでしょうと言うような目で見る。「わかった。少しだけなら付き合ってやるよ」ジャックはため息交じりに頷いた。


「俺はこの変な現象の原因が何か気になるだけだ。別にアイツらのためじゃねぇからな」
「うん、わかってるよ」
「くれぐれも勘違いすんなよ」
「わかってるって、ふふ。じゃあほら、行こう」


夜月はジャックのそでを引っ張り、イソギンチャクが向かった方へ歩き出した。