×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -






iv


あれ以来、グリムの機嫌はすこぶる悪かった。何もやる気が出ないとダラダラ過ごす日々。マジフトがしたいグリムを見て、寮に住み着いているゴーストたちはグリムを遊びのマジフトに誘った。


「おや、みなさん。マジカルシフトですか」
「げっ、一番テンション下がるヤツが来たんだゾ」
「学園長?」


寮の外でゴーストたちとマジフトをしていると、クロウリーが姿を見せた。「ゴーストたちと仲良くやっているようですね」グリムとゴーストたちの姿を見て感心するように言う。「思っていたより優しい人たちですね、ゴーストって」頷く夜月に「別に仲良くねーし!」とグリムは言った。

それで何の用だとグリムが尋ねると「君たちに頼みたいことがあってきました」と突然真剣な声色で伝えてくる。「オレ様たちはもう雑用係じゃねーんだゾ」というグリムに「おや? 私は君たちの衣食住までタダで保証するなんて言ってませんが?」と2人の状況を逆手に取る。「労働とは美しいものですねぇ」とニコニコ笑うクロウリー。「断る選択肢なんて、ないじゃないですか」夜月はまったく、と肩を落とした。

立ち話もなんだからと言って、とりあえず話を聞くためクロウリーを寮の中へと招く。談話室のソファに腰を掛け、クロウリーは本題へと入った。


「実は最近、学園内で不審な事故による怪我人が続出していまして。それについての調査をお願いしたいのです」
「怪我人、ですか?」


詳しく聞くと階段からの転落、熱湯による火傷など原因はさまざまで、ここ数日に保健室の利用者が増えたという。昨日も階段からの転落事故があり、これで10人目。マジカルシフト大会が近づくと学園全体が浮つくのも確かだが、それにしても例年と比べて怪我人が多すぎる。しかも、怪我をした生徒は全員、今年の大会の選抜メンバーに選ばれると注目されていた生徒だった。


「おかしいですね。意図的に狙っているとしか思えない・・・・・・」
「ユウくん、名推理です。ただ、事件とするには証拠が何もない」


すべての事故は人目があるところで起きていて、目撃者は口をそろえてこう言う。「本人の不注意にしか見えなかった」と。脅されている様子もなく、本心でみんな証言しているという。
おかしいな、と思うなか「じゃあソイツらがドジってことなんだゾ。はい、解決〜」とグリムはやる気なく投げやりに言った。「おやおやグリムくん、投げやりですねぇ」というクロウリーに「だってオレ様には関係ねーんだゾ。どうせマジフト大会には出られねーし?」とすねたようにグリムは言う。


「では、ご褒美にマジカルシフト大会の出場枠・・・・・・というのはいかがです?」
「「えっ!?」」
「どうです? 私、とびきり優しいでしょう」
「ふな・・・・・・ふなぁ・・・・・・!?」
「えぇ・・・・・・」


グリムは嬉しそうに目を輝かせたが、夜月に至っては凄く嫌そうな顔をしていた。運動は苦手だ、できるだけあまりやりたくはない。「ですが、今回は協力いただけないんでしたよね。残念ですが、この話はなかったことに」クロウリーはそういって腰を上げた。「やる! やるんだゾ!」グリムはすぐに食いついた。「大会に出してくれるんなら話は別だ! なっ、ヨヅキ!」目を輝かせるグリムに嫌とは言えず、夜月は仕方なくうなずいた。


「でも、マジカルシフトには7人必要って」
「そこはほら。学園長がマジカルなミラクルで何とかあと5人の選手を補填してあげます」


また学園長も投げやりな。そう思っているとグリムは夜月の肩に乗って「ヨヅキ、さっそく聞き込みに行くんだゾ!」と玄関を指さす。「2人とも、頼みましたよ」手を振る笑顔のクロウリーを背後に、2人はさっそく聞き込みに向かった。