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ii


放課後になり、4人は学園長室に訪れた。ノックをして中に入ると、クロウリーは4人が全員いるのを確認し「先日のハーツラビュル寮の一軒が一段落ついたので、君たちにもきちんと話しておこうと思いまして」と話を進めた。


「魔法士になるからには、ローズハートくんが陥った暴走状態について詳しく知っておく必要があります」
「オーバーブロット、でしたっけ」
「オレも兄貴から話を聞いたことはあったけど」
「なあなあ、まずブロットってなんなんだゾ?」


グリムと夜月はブロットについて何も知らない。そのため、まずは基本的なブロットの説明をしてくれた。
ブロットというのは、魔法の使用に伴う廃棄物のようなもの。例えば、自動車は燃料を消費して同時に排気ガスを吐きだす。魔法は魔力を消費して発現し、同時にブロットが吐き出される。つまり魔法の排気ガスのようなものだ。有史以来現在に至るまで研究は進められているが、その存在はいまだ謎が多いらしい。唯一はっきりしているのは、非常に毒素が強く、貯めすぎると魔法士の心身を害するということだけ。大きな力にはリスクを伴う。どんなに優れた魔法士でも、無尽蔵に魔法を使えるわけではない。


「魔法を使えば使うほど不健康になるってことなんだゾ!?」
「いいえ、そうとも限りません」


クロウリーは説明するより見せたほうが早いと言い、おもむろにゴーストを呼び出した。実践授業とでもいうように、マジカルペンを構えるように言い、エースとデュースそしてグリムに魔法を使ってゴーストたちと戦うように言った。
いきなり実践授業を去れゴーストと戦わされたことに文句を連ねるグリム。クロウリーはは魔法石を見るように言う。グリムの魔法石は少し薄汚れていた。


「魔法石についているインクを垂らしたような黒いシミ。それこそが魔法を使ったことにより生じたブロットです」


「あっ、よく見ると僕のマジカルぺんにもうっすらシミが・・・・・・!」自分のマジカルペンを見てデュースはぎょっとする。「もとには戻らないんですか?」そう聞く夜月に、十分な休息をとれば時間経過とともにブロットも消えていくという。魔法石は魔法の発現を助けてくれるだけでなく、ブロットが直接術者の身体に蓄積されないよう、ある程度う肩代わりもしてくれるみたいだ。ごく一部の例外を除いて、ブロットの許容量にそれほど大きな差はないらしい。つまりリドルのように魔法量が多い人ほど、ブロットの蓄積には細心の注意を払わなければならない。


「まあその点、君たち程度の魔力量ならそれほど気を遣わずとも大丈夫だと思いますが。良かったですね!」
「なんか素直に喜びずらいんスけど!?」


ニコニコして言うクロウリー。「でっけー魔人みたいのも出て怖かったんだゾ」あの時の光景を思い出しながら言うグリムにクロウリーは、ブロットの蓄積量は魔法士自身の精神状態に大きく影響を受けると説明した。負の感情、負のエネルギーを抱えているとブロットが非常にたまりやすく、オーバーブロットを引き起こしやすくなってしまう。リドルの背後に現れた巨大な影。あれは負のエネルギーとブロットが融合して現れる化身だと言われているが、実際のところはまだわかっていない。


「というわけで、優しい学園長の特別授業はここまで! さ、みなさんさっさと教室に戻ってください」


「ところで学園長、私の帰る方法は順調に見つかりそうですか?」話が終わった後に問いかけると、クロウリーはあからさまに目をそらした。「あ、あ〜〜ユウくんが元の世界に帰る方法ですね。忘れてませんよ嫌ですね〜」目をそらすクロウリーに夜月はため息を落とした。「まあ、べつにいいですけどね」「おや、いいんですか?」「良くはないけれど、まあいいです」夜月は曖昧なことを言う。「私も忙しいんですよ、この後だって寮長たちとマジフト大会について会議もあるんですから」


「マジフト大会・・・・・・?」
「えっ、ヨヅキってマジフト知らねーの?」
「世界的に有名なスポーツだぞ」


クロウリーの口から出た単語が分からず、夜月は首をかしげる。
マジカルシフト、通称マジフトは7人ずつのチームに分かれて戦うスポーツのようだ。1つのディスクを奪い合って相手の陣地にあるゴールに入れれば得点。こちらの世界でのアメフトと響きが似ている。プロリーグもあり、世界大会も存在するらしい。

「んー、でもヨヅキがマジフトの試合に出るのはちょっと厳しいかもな」エースが言う。「そうなの?」夜月が問う。「マジカルシフトは魔法を使ったスポーツなんだ」それにデュースが答える。ディスクを運ぶのも魔法なら、守備も攻撃もすべて魔法で行う。どれだけ派手に見せられるかというのも選手の腕の見せ所らしい。魔法のある世界特有のスポーツだ。

ナイトレイブンカレッジはマジカルシフト強豪校として世界に名をはせている、とクロウリーは自慢げに言う。OBのプロ選手は数知れず、プロリーグ関係者のみならず世界中の魔法関係者の注目が集まるらしい。当日はたくさんの出店も並び、世界各国から来賓も来て、テレビ中継もされるという。


「早速今日から特訓して、絶対活躍して目立ってやるんだゾ!」
「あ、でもグリムくんは出られませんよ」
「えっ」
「さっきから寮対抗と言っているじゃないですか。君たちの寮は2人しかいません、7人に満たないでしょう?」


「ええ〜〜っ!? そんなぁ〜!」グリムはやだやだとごねる。仕方がないだろ、と言っても注目されて歓声やら黄色い声を浴びたいと、意外に具体的な妄想を連ねた。駄々をゴネルグリムを引き摺って、3人は学園長室を後にした。