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1


――なんだか、不思議な夢を見た気がする。


ドンドンドンと扉を強くたたく音で目を覚ました。眠い目をこすりながらベッドから起き上がる。何か夢を見た気がするが、あまり覚えていない。何だったんだろう。ぼんやりとしたなかそんなことを思っていると、再び扉が開かれた。「こんな時間に、誰なんだゾ・・・・・・」グリムも音で目を覚ましたようだ。二人は眠い目をして玄関へと向かう。


「・・・・・・オレ、エース。ちょっと中入れてくんない?」
「・・・・・・? エース?」


こんな時間にどうしたんだろう。夜月は急いでドアノブを掴み扉を押した。外にはまだ制服に身を包んだエースが立っていた。不満げな顔で。そして首には、以前グリムが魔法で付けられた首輪がはめられていた。


「もう絶対ハーツラビュル寮には戻らない。オレ、ここの寮生になる!」



◇ ◆ ◇



エースを寮へ招き入れ、取り合えず自分の部屋へと通した。まだ掃除は此処の部屋しかできていない。

エースにその首輪はどうしたのかと聞けば、タルトを食べたのだと言った。小腹がすいてキッチンに行くと冷蔵庫にタルトがあった、しかもホール3つ。だから一つぐらいいいだろうと盗み食いをしたらそれを寮長に見つかってしまい、ハートの女王の法律・第89条『女王の許しなくタルトを先に食べてはならない』に引っかかったため罰として付けられてしまったらしい。


「・・・・・・ってわけ」
「・・・・・・どっちもどっちだと思う」
「なんだゾ」


夜月とグリムはあきれ顔をしてエースに言い放った。勝手に盗み食いをしたエースも悪い。罰を受けるのも当たり前のことだ。しかしエースは納得いかず「たかがタルトを盗み食いしただけで魔法封じされるのはおかしくね!?」と訴えた。それも確かにうなずける。魔法士にとって、魔法を封じ込まれるのは手枷と足枷を付けられたようなものだ。


「心が狭いにもほどがあるでしょ!」
「確かに、やりすぎとも思うけど・・・・・・」
「だろだろ?」


グリムは3つもホールがあったなら、誰かの誕生日用かパーティ用だったのではないかと言った。その可能性は十分あり得る。「まず、エースは謝ったの?」そう聞くとエースは「う・・・・・・」と零した。謝ってないのか・・・・・・


「オレ、ヨヅキなら絶対寮長が横暴だって言ってくれると思ったんだけどぉ?」
「横暴だとは思ってるけど、盗み食いも良くないよ」


グリムも「先に食べたオマエが悪いんだゾ」と言い放った。「明日、謝りに行こう。そしたらきっと許してくれるよ」不満そうなエースにそういう。「・・・・・・はぁ、わかったよ。謝ればいいんでしょ」エースは仕方なさげに言う。


「・・・・・・ヨヅキが提案したんだから、一緒に来いよ」
「うん、いいよ。一緒に行こう」


じとりと見てくるエースに笑って答えた。これでひとだんらくしたという時、エースは「じゃ、取り合えず今日どこで寝ればいい?」なんて聞いてきた。此処に泊まる気らしい。しかし、見ての通り掃除されてある部屋は此処だけだ。「寝るなら自分で掃除しろ」というグリムに「げっ、掃除とか絶対いや」とエースは言う。


「ヨヅキ〜、部屋に泊めてよ。オレ、スマートだから幅取らないしさ、ね」
「えぇ、いや、でも・・・・・・」
「お前も小さいし、あのベッドもデケーじゃん。なあ、いいだろ?」


ちゃっかりとベッドを確保してこようとするエースに苦笑をこぼす。確かにこの部屋のベッドは一人分にしては大きなベッドだった。ソファじゃ寝れないだろうし、ほかの部屋は汚いしなぁ。

うーんと悩んでいる間に勝手にエースはベッドに入り込んでしまった。仕方ないかと諦め、夜月はエースとは反対側を向いて寝るようにベッドに横になった。グリムは掛布団の上で猫のように丸まって眠った。


「おやすみ〜、ヨヅキ」
「おやすみ、エース」