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昼食を終え、中庭を通りかかったところで綺麗な歌声が耳に挟んだ。歌声に惹かれ4人が辺りを見てみると、歌声は井戸の方から聞こえていた。そっと近づいてみると、1人の生徒が井戸を覗き込みながら歌っていた。


「誰っ!?」
「あっ、邪魔して悪い。歌が聞こえたから・・・・・・あれ?」


歌っていたのは先日メインストリートでぶつかった生徒だった。以前ジャックに聞いてみたら同じクラスのエペル・フェルミエだと教えてくれた。エペルもデュースやエース、グリムに夜月のことを知っていたらしい。


「どうして井戸に向かって歌ってたの?」
「こうすると井戸に声がこだまして客観的に自分の声が聴けるんだ。だから、ここで歌の練習をするようにって寮長のヴィルサンが・・・・・・」


「僕、『ボーカル&ダンスチャンピョンシップ』のオーディションを受けるんだ。それで、もっと愛らしく可憐な歌声で歌えるようにって・・・・・・」そう続けるエペルは、どこか納得していない様子だった。


「・・・・・・あんな大会、なくなっちゃえばいいのに」
「え?」
「あら、エペル。歌の練習をサボって鳩とおしゃべり?」


ぼそりとエペルが言葉を零した次の瞬間には、誰かに声をかけられていた。
振り返ると、そこにはとても綺麗な人が立っていた。中性的な雰囲気のした美人な人だ。思わず惚けて見つめてしまう。

「そこの新ジャガたち」その人は夜月たち4人に目を向ける。


「うちのエペルは今、大事な時期なの。泥も落としてないジャガイモと遊んでいる時間は無い。レッスン中のこの子にちょっかいをかけないで」


「はぁ? なんだよそれ」エースは腹を立てる。
「僕たちは邪魔するつもりじゃ・・・・・・」デュースは誤解だと弁解しようとした。
「ヴィルサン、そげな言い方やめてげっ! これはオっ、ぼ、僕が・・・‥」エペルは4人を庇おうと前へ出る。

そんなのを無視して、ヴィルはエペルを一瞥する。


「さあ行くわよ、エペル」
「・・・・・・でも僕、本当はこんなことっ!」
「アタシとの約束、忘れたの? いいから来なさい」
「う・・・・・・っ」


ヴィルの言葉にエペルは言葉を詰まらせる。エペルは嫌そうにしているが、ヴィルの言う約束があって従っているようだ。


「ちょっとアンタ。寮長だかなんだか知らねーけど、ソイツ嫌がってんじゃん」
「出会い頭にジャガイモ扱いとはバカにしてくれるんだゾ」


そんなエペルを見てか、それとも先ほどの言葉に腹が立ったのか、エースとグリムは後先考えずにヴィルに突っかかる。


「お、おいお前ら。揉め事は禁止って学園長にさんざん言われてるだろ!」
「エースもグリムをいったん落ち着いて、喧嘩はやめよう、ね?」
「そ、そうだよ。僕は大丈夫だからっ・・・・・・」


デュースや夜月やエペルは、そんな2人を慌てて止めようとするが、既に時遅し。


「ふぅん。ジャガイモ風勢がアタシにもの申そうだなんていい度胸ね。かかってきなさい。マッシュポテトにしてあげる」


◆ ◇ ◆


結果は瞬殺。
上級生でなおかつ寮長であるヴィルに実力で敵う訳もなければ、身のこなしだけで魔法を避けられる。あっという間に倒されたエースとデュースそしてグリムは地べたに転がった。


「全ての動きがドタバタしてて見苦しい。美しさがカケラも感じられない。100点満点中5点。次からは喧嘩を売る相手をよく選ぶことね」


呆れながら3人を見下ろし、用事は済んだと言って「さあ、行くわよ」とエペルに声をかけスタスタと行ってしまう。エペルは「・・・・・・はい。みんな、またね・・・・・・」気を落としながら頷き、ヴィルの後を追って立ち去ってしまった。

2人が立ち去ってから夜月は3人に駆け寄る。


「み、みんな大丈夫?」
「ふなぁ〜・・・・・・アイツ、結局連れていかれちまったんだゾ」
「気分悪。カンジ悪くないと寮長になれない決まりとかあるわけ?」
「ローズハート寮長の耳に入ったら首をはねられるかもしれないな」


項垂れる3人に夜月は苦笑を零すしかなかった。