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21


「今日はパーティに招待して頂いて、ありがとうございました。とっても楽しかったです!」


パーティは無事終了し、寮生たちは各々パーティの後片付けに取り掛かっていた。夜月はハーツラビュル寮生でもないのにかかわらず、伝統行事に参加させてくれたことにお礼を告げた。


「また次のパーティにも来ると良い。歓迎するよ」
「いいんですか?」
「君はもう、ハーツラビュル寮生のようなものだからね」


ニコリと柔らかい笑みを浮かべるリドルに、夜月はフフッと笑みを零した。入学式以来、エースとデュースと一緒に行動し、このハーツラビュル寮の一件にも関わったのだ。すでに寮生のようなものだった。


「出口まで2人に送らせよう。迷っては大変だからね」
「大丈夫ですよ。それより、片づけを手伝わなくていいんですか?」
「君は客人なんだから良いんだよ」


リドルは片付けをしていたエースとデュースを呼び、出口まで夜月を送るようにと言づける。エースは片付けがサボれると一瞬喜んだが、リドルにくぎを刺され肩を落とした。

ケーキをたらふく食べ満足したグリムを抱えて夜月は2人と一緒に出口へと歩き出す。


「そうだ。ヨヅキ、渡したいものがあるから一度寮に寄っていいか?」
「あ、そうだった。部屋に置きっぱなしだから忘れてた」
「渡したいもの?」


エースの口ぶりから、2人とも渡したいものだあるらしい。「渡したいものって?」首を傾げて聞いてみるが「あー、いろいろ?」とエースはあいまいな答え方をする。

寮に来てくれれば分かるというため、夜月たちは一度ハーツラビュル寮に向かうことにした。薔薇の迷路を抜け、お城のような寮へと入り、同室である2人の部屋まで向かう。

2人の部屋へとお邪魔して扉の付近に立って、渡したいものというモノを待つ。エースとデュースはたくさん詰め込んだ紙袋をそれぞれ持って、夜月に差し出した。


「ん、オレのお古ね。Tシャツとかズボンとか、あとバッグとか。大体全部綺麗だから使えると思うぜ」
「こっちは僕のだ。使ってないタオルとかもあったから、よかったら使ってくれ」


差し出された紙袋の中見は、どうやら2人のお古らしい。それぞれの紙袋を覗いてみれば、ぎっしりと服やタオルなどが詰め込まれていた。


「え、貰っていいの?」
「お前、必需品すらまともに持ってねーじゃん。それじゃあ困るでしょ」
「私服も寮服があるからあんまり着る機会がないんだ」


正直、お古をくれることは嬉しい申し出であった。支給されたのは最低限のもので、服も私服は一切なく寝間着も持っていない。かといってそれらを買うお金もなく、制服のシャツと運動着を着まわして生活していた。


「ありがとう、凄く助かるよ」


夜月は素直に喜んでそれらを受け取った。


「まあ、お前にはいろいろ助けられたし・・・・・・そのお礼みたいな?」
「そうだな。これくらいで役に立てたならよかった」


「他にも何かあれば言ってくれ、できるだけ協力する」胸を張って言うデュースはとても頼りがいがあった。夜月は改めて2人にお礼を言う。見た限り、夏服から冬服まで詰め込まれていた。これでこれから来る冬に凍えずに済みそうだ。


「ありがとう、エース、デュース」


初めてできた友人たちの好意に、心が温まった。