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III


「――『首をはねろオフ・ウィズ・ユアヘッド』!!」


赤髪の男が宝石のついたペンを振り何かを唱えた途端、グリムの首にハート形の南京錠みたいなものが現れ、グリムの放った炎を消し去った。首輪のようにはめられたそれをグリムは外そうと再び炎を出そうとするが、なぜか炎が出せない。


「ボクがその首輪を外すまでキミは魔法を使えない。ただの猫同然さ」
「いや〜、相変わらず素晴らしいですね。どんな魔法でも封じ込めてしまう、リドルさんのユニーク魔法」


「絶対に欲しい・・・・・・」眼鏡の男はニコニコしていた笑顔をゆがめ、じっとりとそれを見詰めた。呆然とその光景を見詰めていると、クロウリーがズカズカと夜月に近寄って怒鳴りつけた。


「どうにかしてください! 貴方の使い魔でしょう!?」
「ち、違います! むしろ襲われたんです!」
「しっかり躾を・・・・・・え? 貴方のじゃない?」


グリムのことなんて知らない、と否定すればクロウリーは「そ、そうでしたっけ・・・・・・?」なんて言う。


「では、学園外に放り出しておきましょう。誰かお願いします」


ペットでないならいいですよね、とでもいうようにクロウリーは生徒に呼びかけた。魔法の使えないグリムを生徒が掴みあげる。グリムは大魔法士になるんだ、などと大きく喚き叫んだ。だがその叫びもむなしく、グリムはあっけなく連れていかれた。なんだか、可哀そうに見える・・・・・・。

クロウリーは生徒たちに入学式の終わりをつげ、各々の寮へ戻るように指示を出す。新入生たちは寮長の後をついていき、それぞれ部屋を出て寮へと向かっていく。
部屋に一人残された夜月にクロウリーは視線を向ける。


「さて、ヨヅキさん。大変残念ですが、貴方にはこの学園から出て行ってもらわねばなりません」


クロウリーは魔法の力を持たない者を入学させるわけにはいかない、と言った。「心配いりません。闇の鏡がすぐに故郷へと送り返してくれるでしょう」心配そうな顔をした夜月はそれを聞き、ほっと息をついた。やっと帰れる・・・・・・。
再び鏡の前に行くよう促す。


「さあ闇の鏡よ! この者をあるべき場所へ導きたまえ!」


鏡に呼びかけるが、鏡は黙り込んで答えない。なんだか嫌な予感がする。おかしいな・・・・・・とクロウリーは咳ばらいをしてもう一度前口上を言おうとするが、クロウリーの言葉にかぶるように鏡は答えた。


「どこにもない・・・・・・」
「え?」
「この者のあるべき場所は、この世界のどこにも無い・・・・・・無である」
「・・・・・・」


ああ、少し、そんな気はしていた、夜月は悲しんだり慌てたりすることはせず、そう簡単に上手くいかないよね、と呆れたような乾いた笑みをこぼした。「なんですって? そんなこと有り得ない!」クロウリーは初めての事態に狼狽え、今日はあり得ないことのオンパレードだと愚痴のようなものをこぼしていた。


「そもそも、貴方どこの国から来たんです?」
「えっと、実は・・・・・・」


夜月は自分の出身を口にした。住んでいた国、地域、町。顎に手を添えて考え込むクロウリーに夜月は丁寧に伝えたが、まったく聞き覚えのない地名だと言われてしまった。

二人は図書館へと向かった。夜月のいた故郷を調べるためだ。だがどれだけ探してもそれらしき名前は見つからない。クロウリーは何らかのトラブルに巻き込まれて違う惑星、はたまた異世界から来てしまったのではないか、という予測を立てた。勝手に宇宙人扱いされたのは癪だが、その予測には納得がいく。

帰れる方法はわからない。お金もない無一文。かといって入学させるわけにもいかない。そこでクロウリーは今は使われていない寮での寝泊まりを提案した。「私、優しいので!」と付け足すクロウリーを冷めた目で見つつ、取り合えず見知らぬ場所で寝泊まりを確保できたことに感謝した。