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II


入学式が行われる部屋に向かって歩きながら、その人は此処について詳しく説明してくれた。

ここはナイトレイブンカレッジ。4年制の名門魔法士養成学校。彼はディア・クロウリーと言って、此処の学園長だと言った。魔法士養成学校とは優れた『魔法士』を育成するための機関らいい。ここに入学できる者は『闇の鏡』と呼ばれる魔法の鏡に、魔法士としての素質を認められた者のみである。入学を認められた者には、此処へと続く鏡をのせた黒き馬車が迎えに来るという。どうやら夜月にもその馬車が迎えに来たらしい。

とうとう入学式が行われているという部屋までたどり着いた。入学式を終えてしまったのか、部屋の中は少しばかりにぎわっていた。生徒の話声が扉越しから聞こえてきて、ある人が学園長の不在を指摘した。「腰でも痛めたんじゃないか?」とある生徒が口にする。


「違いますよ!」
「あ、来た」


クロウリーは否定の言葉とともに部屋の扉を開けた。部屋の中には黒い上品なローブを纏った生徒らしき人たちが大勢いた。「まったくもう、新入生が一人足りないので探しに行ってたんです」


「さあ、寮分けがまだなのは君だけですよ。狸くんは私が預かっておきますから、早く闇の鏡の前へ」


クロウリーはそういって部屋の中心に置かれてある鏡へと夜月を促した。夜月はおそるおそるに、その鏡の前に立った。


「汝の名を告げよ」


前に立つと鏡は姿を映すことはせず、緑色の炎を浮かび上がらせ仮面の顔が映りだした。鏡に浮かんだ仮面は低い声で問いかける。


「悠夜月です・・・・・・」
「ヨヅキ・・・・・・汝の魂のかたちは・・・・・・」


気迫あるそれに、夜月は思わずゴクリと生唾を飲み込んだ。仮面は目を閉じて、沈黙を落とす。考えているのだろうか、それにしても沈黙が長い。長い沈黙を黙って待っていると、仮面はやっと口を開いた。


「――わからぬ」
「なんですって?」


その回答に、見守っていたクロウリーは聞き返した。その様子から、こういった状況は珍しいのだとわかる。仮面は続ける。


「この者からは魔力の波長が一切感じられない・・・・・・色も、形も、一切の無である。よって、どの寮にもふさわしくない!」


仮面ははっきりとそう告げた。それもそうだ、夜月には魔力なんてないのだから。クロウリーの話を聞いてから思っていたが、夜月は自分がいた世界とは全く違う世界に迷い込んでしまったらしい。どういう原理で来てしまったのかはわからないが、此処の世界には魔法というものがあるのだ。何かの力で連れてこられてしまったのかもしれない。


「魔法が使えない人間を黒き馬車が迎えに行くなんてありえない! 生徒選定の手違いなどこの100年、ただの一度もなかったはず」


「一体なぜ・・・・・・」クロウリーはそういって悩まし気に夜月を見た。けれど見られたところで夜月に応えられるわけがない。どうすればいいのかわからず、夜月は狼狽えるしかなかった。その時。


「だったらその席、オレ様に譲るんだゾ!」
「みんな伏せて!」


クロウリーに捕まっていたグリムが逃げ出し、青い炎をまき散らした。あたり一帯が一瞬で青い炎に包まれる。「このままでは学園が火の海です! 誰か、あの狸を捕まえてください!」

「チ・・・・・・かったりぃな」獅子の耳を持つ男が呟く。
「アラ、狩りはお得意でしょ? まるまる太った絶好のオヤツじゃない」美しい男が言う。
「クロウリー先生、お任せください。いたいけな小動物をいたぶって捕獲するという、みなさんが嫌がる役目、この僕が請け負います」眼鏡の男が気前よく申し出る。
「さすがアズール氏、内申の点数稼ぎキマシタワー」タブレットの声が棒読みで言う。
「なあ、誰かオレのケツの火ぃ消してくれてもよくねえ!?」ターバンの男が訴える。
「みなさん、私の話聞いてます!?」生徒たちの反応にクロウリーが切実に訴えた。


「偉大なる魔法士になる男・グリムとはオレ様のことなんだゾー!」


部屋一面を青い炎で包み込んだグリムは自信満々に息巻いて、次から次へと炎を出した。


「威勢のいい小動物ですね。リドルさん、お願いできますか?」
「違反者は見逃せないからね。さっさと済ませるとしよう」