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ありふれた世界の崩壊



『fine』が頂点に立ち、生徒会による規律ある新体制が学院内に引かれた。今のところうまくいっているみたいだが、しばらくすれば群衆からは不満があがるだろう。生徒会による規律ある独裁なのだから。革命なんてそんなものだ。全員の満足のいく幸福なんて、叶えられるわけがないんだ。

『五奇人』は散り散りになった。それぞれが身をひそめ、宗や夏目はそれが顕著に出ていつのまにか『五奇人』は『三奇人』に数を減らした。渉は『fine』に加入した。今までの『旧fine』は解散し、新たな『新fine』には今のところ英智と渉だけだ。これには夏目がひどく反発していた。奏汰は千秋と一緒に『流星隊』に加入して、上手くやっている。以前の自分を改めて、人間らしくなった。これも千秋のおかげだろう。そして――――



久しぶりに足を踏み入れた学院の構内。夕方ごろ、生徒の数が減ったころに夜月は人を避けて軽音楽の部室に足を踏み入れた。以前は零が入部しているということで騒がしい部室だったが、それも今は見る影もない。
部屋のカーテンは全て閉めきっていて、とても暗い。夜月は足元に気を付けながら進み、カーテンを開ける。一つの窓から夕陽だけ差し込んだ。

部屋の隅には大きな黒い棺が置かれている。人が二人ぐらい入りそうな大きさだ。一体どうやって運び込んだんだか。コンコン、と棺のふたを叩く。しばらく待ってみるが、反応はない。再びコンコンとノックする。それを何度か繰り返していると、ギギっと音を立てて蓋が動き出した。

動いた蓋によってできた隙間から、人の指が出てくる。そのまま棺のふたをスライドさせ、頭の方だけ中を覗かせる。まるでホラー映画のワンシーンのようだ。


「なんじゃ、我輩まだ眠いんじゃが・・・・・・」


頭の部分だけ覗かせた棺の中から、寝転がったままの状態で眠そうな声を上げた。少しだけ不満げのある声色をしている。


「やあ。おはよう、零」


棺の傍らに腰を下ろし、棺の蓋に両腕をついて棺の中にいる零を見下ろす。零は目を丸くして夜月を見上げた。そして「ああ・・・・・・おぬしか。おはよう、我輩の愛し子」と優しい笑みを浮かべた。

以前の零はどこかに消えた。今のようにまるで老人のような口調になって、強引な性格は身をひそめ一歩を引いた立ち位置にいるようになった。それでも根本は変わらない。朔間零と言う人間はどこも変わっていない。だから何の問題もないのだ。朔間零に憧れていた晃牙はひどく反発していたけれど。


「ねぇ、零。楽しいことをしよう。退屈でお腹がすいたよ」

「困ったのう、少しは我慢できないのかえ?」

「今までたくさん我慢はしたわ」


フフッと微笑む夜月に、零は手を伸ばす。彼女の頬に手を添えて指で撫でる。夜月はくすぐったそうにしながらも、瞼を閉じてされるがまま掌に頬を押し付けた。


「私を離さないでくれ、零」

「無論じゃ。おぬしも、我輩を離さんでおくれ」


『吸血鬼』と『悪食女王』は、次の荒波を待ち望み、来るべきその日まで身をひそめた。『皇帝』に立ち向かう革命が訪れる、その時まで。


――Fin.

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