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一緒に死ぬのが私の愛だよ



革命は終わり『五奇人』は粛清され『fine』が頂点に立った。学園は生徒会によって新体制が引かれ、多くの犠牲によって停滞した安寧を手に入れた。救われた者、傷を負った者、勝ち残った者、去った者。革命によって手に入れ失ったものはそれぞれ。

『皇帝』となった少年の手によって描かれた通りにシナリオは進み、それに少しばかり手を加えた『女王』が新たな犠牲者となり、シナリオは決まった結果を生み出した。たったひとつ、『女王』という犠牲者が増えただけ。

地獄が終わり、悲劇は幕を下ろした。



夜月はレオの家を目の前に、なんだか久しぶりだと思った。毎日のように此処へ来ていたのに、ここ最近は学園の革命で足を運べなくなり、続いて入院までしてしまった。とはいっても数日間。それだけでも久々だと思ってしまうのだと、夜月はクスリと笑った。

インターホンをならせば、ルカが出迎えてくれた。何度もお見舞いに来て無事を知っているのに、本当に良かったと安堵に涙をこぼした。ルカにもご両親にもとても心配をかけてしまった。そして、きっとレオにも。

家に迎い入れられ、夜月は目的であるレオの部屋へと向かった。この固く閉ざされた扉の前に立つのも、久々な気がした。以前のように右手を掲げ、控えめに戸を叩いた。そして、声をかける。


「――レオ、私だよ」


いつもの声色で、語り掛けた。扉の向こうで初めて物音を立てた。物音は大きく、動揺しているのが分かった。扉に向かってくる足音も大きく、固く閉ざされた扉は勢いよく開かれた。

目を見開いたレオがそこにいた。猫みたいに大きく瞳を開かせて、不安に揺れていた。音もなく、静かに息を飲むのが分かった。


「ただいま、レオ」


笑顔を浮かべた。それに引き摺られて、レオはくしゃりと表情を崩して、瞳いっぱいに涙を溜めた。おもむろに腕を伸ばされる。応えるように腕を広げ、近寄った。抱きしめられるのと同時に、背後でパタリと扉は閉まった。


「夜月・・・・・・、夜月っ・・・・・・」

「うん。私は此処に居るよ」


何度も頷き、背中に両腕をまわして安心させるように語り掛ける。

「ごめんね、心配をかけて。私はもう大丈夫だよ」そもそも傷は深くなかった。額を切ったせいで出血が多く見えただけのこと。とはいっても頭部を強く打ち付けたことは事実だ。もう心配はいらないと夜月は続ける。


「ごめん・・・・・・っ、おれ・・・・・・会いに、行けなくてっ・・・・・・」


すぐに会いに行きたかった。けれど外に出ること叶わなかったと、レオは何度も謝罪を言葉にした。「いいよ。会いに来てくれようとした事実だけで、私は嬉しいよ。ありがとう、レオ」謝罪とは反対に夜月は感謝を口にする。

しばらく2人は抱きしめ合っていた。レオは存在を確かめるように、何処にもいかないようにまるで繋ぎ止めるかのように縋って。夜月は安心させるように包み込んで。

レオが安堵し身体の震えが無くなったころ、2人は散らばった床の上に並んで寝転がった。身体を向かい合わせ、片手は固く手を繋いだ。


「もう大丈夫だよ、レオ」


おもむろに、夜月はそう口にした。瞼を閉じ、目をつむった夜月は穏やかに続ける。


「もうなにも心配することは無いよ、レオ」


怪我のことを言っているのだろう。しかしレオは素直にそれとは受け取れなかった。夜月はなにか違うものを指して言っているのではないか。なにかがその言葉に含まれているような気がしてならなかった。

答えられずにいると、瞼を上げた夜月は見つめながら微笑んだ。レオは控えめに頷き、そっと瞼を下ろす。もう大丈夫だと同じ言葉を心の中で繰り返して、数日ぶりに深く意識を手放した。

眠りに落ちたレオを見つめる夜月は、どこか穏やかで、恍惚としていた。

――もう大丈夫。なんの心配もいらない。

革命は終わった。学園は停滞して退屈と化したが、次の荒波が来るのも時間の問題。現状の学園では刺激が足りないが、その転換点が来れば、きっとまた楽しい学園に変貌するだろう。

――ひとりで逝かせはしない。

そのためにシナリオを書き換えたのだから。とても良いきっかけになってくれた。『女王』は『王様』と対になっている。『王様』が居ないと『女王』は成り立たない、意味を成さない。だから『女王』を断頭台に立たせ、殺した。『王様』が壊れてしまったから。


「一緒に死ぬのが私の愛だよ」


怪物はうっとりと囁いた。



――Fin.

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